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02
部屋から出て来たのは高校の先輩である毛利先輩と鈴木財閥の園子さんだった。
今はパーティー以外で会うことはないけど、昔は父親同士の親交が深いのでパーティー以外でも家に行ったりと会う機会が多かった。

「ああ、そうよね。新郎が高杉グループの跡取り息子ならアンタもいて当然よね」
「え、北条君とも知り合いなの?」
「彼北条拓真って言って北条グループの次男。新郎と仲良いもの。てゆうか何で蘭と知り合いなの?まさか、蘭をナンパしてなんかいないでしょうね!?」

園子さんは歩きながらぐっと顔を近付けてきて睨んだ。

「ち、違うよ。学校で会っただけだって!」
「学校?ってその制服、アンタ帝丹なの!?ウソ、知らなかった!」
「あれ?言って無かったっけ?」

聞いてないわよ!と文句を言う園子さんにどうしようかなと視線を逸らしていると毛利先輩の足元に居た小学生の少年がなんか凄い顔で俺を見ていた。

「えっと、初めまして。俺は二人の高校の後輩の北条拓真って言うんだけど君は?」

「あ、この子は江戸川コナン君。うちで預かっているの。ほら、コナン君挨拶しなきゃ」

毛利先輩に挨拶を促された江戸川コナンという少年は何故か後ろを振り返った。

「ん、どうし――



ダンッ



「なんだ?今の音?」
「先生の部屋からよ!」

何か大きなものが落ちた様な音がした。
心配になって四人で部屋の前まで戻り毛利先輩がノックをするが返事が、ない。

「すみません、あけますよ」

毛利先輩に場所を代わって貰い、扉を開ける。
そこには、血を吐いて倒れている新婦の姿があった。

「園子さん、救急車呼んで!毛利先輩は新婦側の人に知らせてください!」

既に彼女達の悲鳴でまだ近くに居た俊彦とその友人達は直に来るだろうが彼女達をこのまま現場に残しているのも憚られ、二人に指示をして新婦に近づく。声を掛けるが反応が無い。

ええっと、吐血の際は血液が喉に逆流して窒息することが無いように顔を横に向ける。
意識が無いので体を横に向け下顎を前に出す。上側の肘を曲げ手の甲を顔の下に置く。上側の膝を支えにしたらあとは、

「全身の保温と腹部の冷却ってこんな場所でどうやるんだよ!?」










松本小百合さんが病院に運ばれ、現場に居合わせて居なかった警察官以外の人達が帰った。なんと新婦の父親は警官だったらしい。なんかあったら困るので指紋とか取られたくないと思った。

夕方になったが分かったことは何者かが新婦のレモンティーに苛性ソーダを混ぜた事だけだ。警察達はたまたま録画されていたビデオを見ているが未だに誰が入れたかは分かっていない。

「あの、毛利先輩。もう時間も遅くなってるしコナン君連れて帰りましょうか?」

小学生の子どもがこんな所に居続けるのも良くないだろう。

「本当?じゃあお願いしようかな」


ビデオを眺めている少年へ近付いて言う。
「コナン君?もう遅いし俺が送るから帰ろうぜ」
「えー、僕ここに残るよ」
「でももう遅いし、帰った方がいいだろ?こんなとこ居続け無い方が良いし、な?」

説得してはみるが此処に残ると聞かない少年。

「もう少しで何か分かるかも知れないんだ!」

もう少しで何かって、

「あのなあ、コナン君。警察が捜査してるんだからちゃんと解決するさ。俺達みたいな一般人が出る幕は無いよ。ほら帰ろーぜ」

すると目の前でパチンと手を合わせて言った。

「もうちょっとだけ!」

テコでも動かないとでもいった様子に根負けした俺は少年とビデオを見ることにした。

「……なあコナン君。コーラ買ってやろうか?」

どうして、こんなことになったのだろう。






新郎の高杉俊彦の逮捕で事件が解決したのはもう日も落ちきった頃だった。

「…北条君」

会場の入り口の階段に座っていた拓真が呼びかけに振り返ると蘭と園子とコナンが居た。

「ああ、毛利先輩。」
「アンタ大丈夫?」

滅多に聞いたことの無い園子さんが俺を心配する声に自嘲した笑いが零れる。

「いや俺、本当に何にも気が付かなかったっていうか、何にも分かってなかったなって」

「園子さんは知ってるだろ?あんなやさぐれてた俺相手に、俺も似たようなもんだしとかなんとか意味分からねえ言って構い出してさ。うちの兄さんよりも兄貴って感じで、そんなやつ他にいないよ」

なのに俺が俊彦に出来たことってなんなんだ。
どうして、俺は何も気付け無かったのだろうとか、気付いていれば止めることが出来たかも知れないのにとか。
結局俺はあいつの何を見てきたのだろうとか今更どうしようもないことがずっと頭を回っている。

「…」

彼女達に話していて気が付いた。
ああそうだ。前のことは今更どうしようもないんだ。
俺に出来ることがあるのは帰って来てからだ。

今までの落ち込みが嘘の様にスッとした。
立ち上がりグッと背筋を伸ばす。
自分が気まずくさせてしまった毛利先輩達の顔を見てもう心配かけない様に笑いかける。

「まあ、帰ってきたら一発殴ってやりますよ」

待ってやがれ、馬鹿兄貴。




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