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01
「んあ?」

目が覚めると明らかに自分の部屋で無い場所にいた。どういうことだろうと記憶を辿ってみると夕飯を食べた後の記憶が無い。これはあれだ。飲みすぎってやつだ。
昨日はコーラしか頼んで無い。誰かに飲まされたのだろう。俺、未成年。

「あー…痛てえ」

結構な時間になっている筈だから起きようとしたけどズキリと頭に響いて重たい頭をまた枕に伏せた。

くそ、カルバドスの野郎。ぶつぶつと一人枕に向けて呻いているとチャイムが鳴ってまたそれが頭に響いた。どうやら誰かの部屋でなく、ホテルだったらしい。
仕方なく立ち上がり扉へ向かった。小窓を覗くとそこにいたのはカルバドスだったので扉を開けた。

「…何だよ」
「顔が青いぞ」
「るっせー声出すな。頭に響く」
「悪い、悪い。入るぞ」

部屋に入ったカルバトスはそのまま冷蔵庫を開けて拓真に飲めと言って水を渡した。
渡された水を一気に飲むと近くにあったソファに寝転んでカルバトスをみる。

「で、ここ何処?」

拓真が聞くとカルバトスは目を見開いて覚えてないのか、と呟くと額に手を当てて一言「すまん。飲ませすぎた。」とこぼした。

「サイドベイホテルだ。」
「ふーん」
「ふーん。っておい」

拓真の能天気な様子に口元が引き攣るのを感じた。
もう少し反省したり焦ったりしてもいいだろうに。…ある意味大物とも言えなくはないが。

「…連絡」
「あの執事が上手いことやっただろ」
「ここ、猿渡さんが取ったのか?」
「覚えてねえのか?自分で頼んだんだろう?」

まあカルバトスは猿渡さんの連絡先を知らないのだから当然なのだが。
何で俺、サイドベイなんて頼んだんだ?

「…あ」
「思い出したか」
「…今日、結婚式の前祝」
「時間大丈夫なのか?」
「…時間?あー…もういい。どうせはっきり行くって言ってねえし明日だけでいいや」

明日は友人である高杉俊彦の結婚式がある。その前日に新郎側だけで集まって軽い前祝をするからお前も来いと言われていた。
確か夜の8時半からだった。まだ時間はあるけどもう今日は出かけるのが億劫だ。

「…スティンガー、お前そんなことで社会人なったら大丈夫なのか?」
「…どうせまともな社会人には成らねえんだからいいだろ」何処にまともな社会人の犯罪者がいるのだ。と拓真は思う
自分のやっている事が犯罪だとは知っている。だからって止める気も無い。止めることなんて出来ないのも分かっているのだから。

如何してこんなにネガティブなのだろうと自分でも思ったが二日酔いのせいにした。きっと気分が悪いから変なことばかり考えるのだ。
どうせこんな状態では祝いなんて出来やしないので寝ることにして布団に潜った。

「おい。寝るなら水飲んでからにしろ」
「うるさいなあ。大体どうしてお前がここにいんだよ」
「…今更だな。お前の執事が取ってくれてよ」
「はあ?それ猿渡さんが自分で泊ろうしてた部屋じゃね?」

結構遅い時間だった筈だし猿渡さんは自分が泊まるつもりで部屋を取って置いて一応カルバトスに気を使って聞いただけだろう。それなのにカルバトスがマジで泊まったから仕方なく帰ったのだ。きっと。…本当に空気読めない奴だな。

「…マジで?」
「絶対そうだって」
「いや、でもよお。執事が勝手にホテルに泊まるか?」

指摘されて漸く気がついたカルバトスがきっと違うと否定し続ける。

「だから、猿渡さん執事みたいな人であって、執事じゃ無いんだよ。住んでるのだって自分の家だし」

本当は父親の秘書だからな。

でも猿渡さんは昔からの付き合いらしくて普通に意見するし、父親の車を使って出かけたりもするし結構自由にやっている。
俺の身の回りのことを手伝ってくれるけど、勿論立場的には猿渡さんの方が上だ。

父親と猿渡さんの関係は多分、というか絶対普通の会長と秘書の関係じゃない。ならどういうものかと聞かれても答えづらいけど。


もしかしたら元は俺とカルバトスみたいな関係だったのかも知れない。もちろん、カルバトスが俺の秘書。






次の日の朝、前の日に猿渡さんが持って来てくれた制服を着て式場に向かった。
今日の主役である高杉俊彦は高杉グループの跡取り息子だ。
何度かパーティーで顔を合わせることが多く、その内に意外と気が合うことが分かり、今では気のいい兄貴って感じの人だ。

結婚するのは音楽の教師だそうだ。大学で知り合い交際を続けてついに結婚。今は六月なのでジューンブライド。

「あ、もしかして君、北条君?」
「へ?」

高杉とは年が離れているし、今日呼ばれているのは拓真の知っている財閥関係者よりも面識の無い大学の同級生がほとんどなので一人会場をぶらぶらと歩いていると一人の男性から声を掛けられた。

「やっぱりそうかあ。昨日来ないから俊彦怒っていたよ」
「あはは、やっぱりそうですか。どうしようかな」
「これからあいつを花嫁の所に連れて行くんだ。君も急かしてやってくれよ。あいつ意気地なしでさ」
「まだ顔合わせに行って無いんですか?」
「後でいいって言い続けてもう三十分。」

男が苦笑いをしながら言った。

「はあ、」

意気地なしと言っても、もう結婚式だ。
こんなところでしり込みしても仕方無いだろうに。

その後言われるがまま花嫁のところへ引きずられて行く高杉を茶化しに行くと新婦の控え室の前で未だに粘っている高杉の後ろ姿が見えた。

「だから、いいって言ってるだろ。どうせ式で見るんだし」
「普通その前に様子見に行くでしょ。いい歳して何恥ずかしがってんだよ。」
「は!?いい歳ってなんだよ!…っておう、拓真か。今日は来たんだな」

振り向いて拓真を見た俊彦が肩を叩いて言った。
どうやらまだ昨日のことを根に持っているらしい。

「こういうとき位はっきりしろよな」
「…お前もこういうとき位素直に祝ったらどうだ?」
「はいはい、おめでとうってことで。新郎なんだから照れんなよ―――っと」
「うわっ」

俊彦の友人達と彼の背中を押して無理矢理新婦の控え室に押し込んだ。
にしし、とお互い顔を見合わせて笑い。しばらく待っていることになった。

「そういえば、似たような制服の子達を見かけたけど北条君って小百合さんの学校の生徒なの?」
「いや、俺は新婦に会ったことないですけど。確か中学の先生ですよね?」
「ああそっか」

新婦の昔の生徒だろうか。


しばらくして俊彦が出て来た。どうだったと聞かれてぐっと指を出して自慢げに笑った。
何気なく俊彦の出た控え室を眺めていると、もう一度扉が開いた。

「あれ?北条君?」
「ああああ!アンタ!」
「え?毛利せんぱい?園子さん?なんでここに?え、てゆーか何で二人一緒?」

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