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02
「んなことはいいからこないだの先輩?のこと教えろよ。どうなったんだ?」
「カルバトスしつこい。…大体先輩とは何ともなってないし」
「何ともなってないってお前、何ヶ月たってんだよ…」

「あー、ニヶ月?んー三ヶ月?…って、何だよー?」

カルバトスとだけじゃなくてコルンまで目を見開いてア然としている。

「三ヶ月ってお前…」

「るっせえな、いいんだよ!先輩はなあ、おまえらとは違ってピュアなんだよ!」
「ほお、ピュアねえ」
「ピュアだよぴゅあっぴゅあ」

些か言動が可笑しくなっている拓真だか本人は気付きもしないで俯いた。

「…カルバトス、スティンガーに飲ませたのかい?」
「ん、ああ」
「キャンティとスティンガーが話している間に入れ替えてた」

カルバトスもまさか一気飲みするとは思っていなかったようでこの言動には少し引いていたし、黙って見ていたコルンも少し後悔した。
もちろん悪いことをしたという意味ではなくて悪いものを見たという意味で。

まあカルバトスが入れ替えた酒は普段拓真が飲んでいるようなコーラで割った物ではなく、驚く程強い酒なのだから仕方ないのだが。しかしこんなチャンスはなかなか無いのでその"ぴゅあっぴゅあな先輩"について聞き出すことにした。

「"ぴゅあっぴゅあ"ねえ?」
「そう、ぴゅあっぴゅあ。超かわいい」

おもしれえ、コイツ完全に酔ってやがる
カルバトスがそういって笑いながら更に聞く。
キャンティも空になっているコップに今度は自分の焼酎をいれている。もちろんコルンは黙ったまま見ている。

「で、相手がぴゅあっぴゅあ過ぎて手が出せないまま三ヶ月もたったってわけだ」

「だからぁ、先輩は超ぴゅあだから幼なじみに一途でさあ、でもそこがまたかわいいんだよなあ」

そういってもう一度コップの中身が変わっていることに気付きもせずに焼酎に口を付けた拓真に三人はぎょっとしたが直ぐに二人は爆笑しだして一人は構わずゲソを食べた。つまりは全員面白がっているのである。

「そうか、そうか!片想いか!ハハッハハ」
「スティンガーが、かっ片想い…!」

「まじでかわいいもんなー。カルバトスには分からないよなー」

「あぁ?何で俺はわかんねえんだよ?」
「だってオッサンにはわかんねえよ」
「…お前言ったな」
「え?い゙ってえ!?何すんだよー。ははっ」

コルンもキャンティも生まれて初めてと言っていい泥酔をしている拓真に気を取られていたがカルバトスもなかなかに酔っていた。普段よりも力強く殴る様子を見て初めて気が付いた。

あ、コイツらめんどくさいかもしれない

正にこの師あって弟子ありな状態であった。





「おい、起きろ。帰るぞ」

いつの間にか少しは酔いが醒めてまともな状態になっていたカルバトスが散々蘭について語っていつの間にか寝ていた拓真を起こす。

キャンティ達(主にコルンは)は少し前に想像した最悪の状態にならなかったことに安堵していた。

「ん、ああ。…っと俺寝てた?」
「爆睡だったな」
「うわあ、まじかよ」
「いいから歩け。男は負ぶらねえ」
「あいよー…」

頭が動いているのかいないのかよく分からないフラフラとしている拓真を無理矢理タクシーに押し込んだ後、カルバトスも乗り込む。
キャンティとコルンは後ろのタクシーに乗って帰ることになった。車は明日取りに行くらしい。

「で、家に帰んのか?」
「…サイドベイ。猿渡さんが取ってる」
「うわ、寝やがった。…すいません、サイドベイってホテルまで」


ホテルに着いてもまだ寝ぼけている拓真を仕方なくカルバトスが支えてロビーに入ろうとすると既にチェックインを済ませて待っていた猿渡が出て来た。

「悪いな。飲ませ過ぎた」

一言謝ってからそのまま部屋に運んだカルバトスは他を予約していないのなら、と猿渡に別の部屋の鍵を渡されて一度は遠慮したが何でも拓真の父親が此処の株主らしいので有り難く使わせてもらう事にした。

猿渡自身は今から家に帰ると聞いて、何とも真面目な執事だと感心した。






夢と現実の間に立って
(あいつどんだけその先輩の事が好きなんだよ)

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