カシャッカシャッ
ジンに付いてウォッカと社長さんの所へ向かっているとカメラのシャッター音が聞こえてきた。
「…マジかよ」
予想外の事態にどうしたものかと自分の顔が引き攣るのを感じながら斜め前を見ると、舌打ちをしたジンはそのまま工事にでも使ったのか放置してあった鉄パイプを掴み俺にいつもより鋭い視線を向ける。
「っ、他に仲間がいないか確かめて来る」
あんな近くに一人でいたってことは単独だろうが、念のため急いで周辺に怪しい奴がいないか確かめる。
万が一、仲間がいたとしても何か起きた時の為にすぐに駆け付けられる範囲にしかいないだろう。
「たっく、あーめんどくさ」
そもそも俺は朝から社長が怪しい動きをしないか見張っていたがその間は何も無かったのだから、たまたま様子を見た一般人だと言うことは簡単に想像出来て思わず誰に向けることも出来ない悪態をつく。
「……悪いこ…する…じゃ…ぜ…」
「…ま…の組織…くら…たら…」
取引現場が見える所に人がいないことを現場の後ろに回り込む。
僅かに聞こえるウォッカと社長の声に耳を傾ける。
「それ以上は言わない方が身のためですぜ」
「黙れ!!ハイエナ共め!」
いつ出ていくかタイミングを計っていると社長の俺達を罵る言葉が聞こえたので俺は社長の背後に歩み寄り、背中に拳銃を突き付ける。
「いちいち煩いな、おっさんが黙ってなよ。余計なことしないでさ」
「ひっ」
社長が出した空気の抜ける様な音に間抜けな音だなと思いながらジンに視線を向け周りは大丈夫だと知らせる。
その時、既にジンがすぐ後ろにいることに気付いていないカメラの男とほんの少しだけ目が合った。
っ工藤新一………!!?
「探偵ごっこは、そこまでだ」
ドカッ
予想もしていなかった展開で俺が固まった一瞬の間にジンが工藤新一を殴り、工藤新一は倒れた。
「ア、アニキ…」
「こんなガキにつけられやがって…」
「っ!!」
はっとした俺は茫然と倒れた工藤新一を見ている社長にもう一度拳銃を向ける。
「これで余計なことしたらどうなるのか分かったよな?……余計なことはするなよ」
ひゅっ、と小さな音をだした社長にさっさと消えろと目で促すと走って逃げ出す社長をこの様子なら喋らないな、と見送る。
「…お疲れ様でしたー。」
何の気無しに呟いたて工藤新一をどうするか話し合っているジン達に歩み寄る。
「はぁ、何やってんだこの人…」
「知ってんのか?」
ため息を付いた俺を見て、ウォッカが知り合いなのかと聞いてくる。
「コイツ工藤新一だろ、高校生探偵の。俺の行ってる高校の先輩。…で、どうすんの?」
「こいつを使う。組織が開発した毒薬だ」
「あ、あの志保さんが作ってたヤツか」
死体から毒が検出されない毒薬。
完璧な完全犯罪が可能になる。
「アニキ、スティンガー、早く!!」
ウォッカに促されてその場から去る。一度振り返ってもうすぐ死ぬ工藤新一を見て毛利先輩は泣くんだろうな、と柄にもなく胸の奥で何かつっかえる様な嫌な感じがした。
毛利先輩ごめん。
本人に直接は言わないが心の中で呟いた