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04
そして日曜日、取引の当日。実際の取引は夕方だけど俺は朝からトロピカルランドに潜入している。

昼になったが特に変な奴が張り込んでいる様子は今のところ無い。

取り敢えず休憩するか。と気を抜いていると背後からいきなりなにかが衝突した。
驚いて振り返ると腰に女の子が抱き着いていて、

「うさぎさん!風船ちょうだーい」


…そうだ。今の俺はうさぎさんだった。

あのあと男一人でトロピカルランドなんて怪し過ぎると思った俺はトロピカルランドで短期のバイトを探して、職員としてトロピカルランドに入った。
そして今日一日着ぐるみを着て風船を配っているのだ。

はじめはこのピンクのうさぎに相当抵抗があったが、ジンとウォッカや社長さんが入場したのを見たらウサギさん全然オッケーって感じだ。

あれは酷い。遊園地にミスマッチすぎる。黒服のでかいロン毛とグラサンが二人て遊園地とか何の冗談だよ?
あれはこどもの前に出る格好じゃない。俺が子供だったら泣くぞ。

社長さんはもう、なんていうか…。うん。なにも言うまい。


「青じゃなくて赤がいいー」

あーはいはい。一人が来ると急に子供達が寄ってくる。あ、しばらく休憩出来ないなこれ。
風船くれだの写真撮ってくれだの揉みくちゃにされて、ああもう。落ち着いてくれ。


「あ、新一!風船貰おうよ!」


………は?
いやいやいや何で毛利先輩がいるんだよ!


「お前、これからアトラクションまわるのにずっとそれ持っとくのか?」

「あ、そうか」


え、デートって今日ですか!?
嘘だろおい。


「じゃあ写真だけ撮ろうよ!」

「あー、撮ってやるからカメラ貸せって」


パニクってる俺を一人おいて話を進める毛利先輩達。
え、写真!?うわ、毛利先輩ちかっ!
腕に抱き着いてくる毛利先輩を離すことも出来ないままカメラに向かってポーズをとる。
こういう時被り物のありがたさが身に染みる。

毛利先輩達は何時まで此処にいるつもりなんだ?巻き込まれるなんてことはよっぽどのことが無い限りないだろうけど、今日はなるべく早く帰ってもらいたい。


「おい、ミステリーコースター乗るんだろ?早くしろよ」

「あ、ちょっと待ってよ!ありがとうございました」
いやいや此方こそ。ってミステリーコースター!?
ミステリーコースターは今ジンとウォッカが並んでるんだ。行かせるわけにはっ!

「ぐっ」

「なあ、俺にも風船くれよー」

ああ、だめだ。今の俺、うさぎさんだった。












営業時間も終わりに近づいて俺のバイトも終わって此処からが本業だ。
うさぎさんから黒服に着替えて野球帽を目深にかぶった俺はジンと合流してから社長さんの所へ向かう予定だから時間通りにジンを待っているのだが中々来ない。

休憩時間にミステリーコースターで殺しがおきたって聞いたからまさかジンが社長さんを殺したのかと一度は焦ったが捕まったのは女の人らしいと聞いて安心して待っていた。
だけどいくら待ってもジンがても来ないが一度社長さんを覗きに行ったが生きている…
どういうことだ?


「スティンガー。待たせたな」

やっと来たジンの何でも無いように振る舞う様子にイラッとした。


「遅せえよ。待ちくたびれた」

「コースターで殺しがでたからな。まだサツがうろついている」

「はあ?殺人?なに、やっちまったの?」

「馬鹿いうな」

「分かってるって。てゆーかウォッカは?」

「もう話を付けてるだろうよ」

「ふーん、じゃあ行きますか」


大量の警察と殺人犯に拳銃密輸をしている男。
多分今此処は世界で一番物騒な遊園地だな、と思いながらそう言ってジンと観覧車へ向かった。

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