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普段穏やかな教室に突然少しの緊張感とガリ勉が現れる。今日は中間テストだ。いつも通りの時間に学校に行くと廊下にまで教科書を出して問題を解き合う生徒で溢れている。

「…何これ?」

テストってやっぱり点数とらないとやばいのか…。
昨日は仕事断った方が良かったな。失敗した。

「よ、拓真。なんかお前余裕だな」

周囲の様子に茫然としていると笠原が後ろから俺の肩を叩いて言った。そういう笠原の手にも参考書があり驚いた。こいつはテスト勉強なんてしないと思っていた。

「ああ、一樹。余裕っていうか、今更勉強しても仕方ないだろ」
「そういう所が余裕の表れなんだよ」
「別にそうじゃねえって」

そうだよな。今更焦っても仕方ない。
自分に言い聞かせてとりあえず教科書を眺め始めた。



そんな事があったテストも終わり、点数が出ると正に阿鼻叫喚、若干大げさに言ったけどそんな感じだ。中には若干嬉しそうな奴もいるけど大体が呻いたり、なんか暗いオーラが見えそうになっていたりする奴ばかりだ。
後ろの笠原なんかはうわ、と一回呻いたきり携帯を弄りだした。現実逃避だな。
此処で俺も一つ現実逃避の為何か別のことを考える事にするけど考える事も無いので、まさか笠原って苗字の奴が同じクラスに二人もいたとは…普通別のクラスに分けるだろ、なんていうどうでもいい事に思考を飛ばすしかなくてなんか凄く無駄なことをした気がする。
一方の笠原一樹(イニシャルはK.Kだ)も現実逃避の無駄さに気が付いたようで携帯をしまい、文句を言うことに切り替えた。

「大体、英語なんて何処で使うんだよ」
「世界史なんかもっと使わない」
「世界史は覚えるだけだろ」



お互いに文句を言い合った後、漸く始まった部活に行く。
今日は空手部も練習しているなと予定表を思い出していると少し先に毛利先輩がいたので久しぶりだし声をかける事にした。

「毛利先輩こんにちは。テストどうでした?」
「あはは…まずまずって所かな?北条くんは?」
「俺もまずまずって所ですね」

あれから先輩達が何かと余計な世話を焼きたがったおかげで…は無いと言いたいが、とにかく毛利先輩と普通に話すようになった。

だけど俺は毛利先輩と付き合いたい訳じゃない。―そりゃあ、あの高校生探偵の工藤新一と付き合ってるって聞いたときは少しショックだったけど―だからもちろん恋人同士の間に無理矢理入りたい訳でもない。
だから別にこれ以上押す必要も無いというところで今は落ち着いている。

世話焼きな先輩達はもっと攻めろだのなんだのうるさいが一人モノは黙っておけ。

「今度都大会ですね。応援に行っても良いですか?」
「え、来てくれるの?」
「毛利先輩は何て言ったって優勝候補ですからね。応援させて下さい」

この間毛利先輩が優勝候補だと聞いたのは誰からだったか。
俺は空手の事はよく分からないけど、たまに練習を見ていても強いと思うし、次の主将が毛利先輩だというのは公然の事実なのだから優勝候補だと言っても全然過言じゃないだろう。
知り合いの先輩がそんな人なら応援に行ってもまあおかしくは無いはずだ。
それに俺はまだ試合での毛利先輩を見た事が無い。これはいい機会だ。是非とも見たい。

「優勝候補だなんてそんな…」

謙遜する必要も無いのに控えめな姿は好感が持てる。それでもって少し照れた様子が何て言うか…年上に言うのもどうかと思うけど、可愛らしいと言うか…うん、可愛いな。
今まで見てきた毛利先輩はしっかりした人って感じだったから少しドキッとした。
「だから、その、応援行きますんで頑張って下さい」

おい俺、ちょっと落ち着けって。
自分に自分で叱責する。我ながら毛利先輩の前での態度はどうにかならないのか。幾ら何でも毛利先輩の前でぎこちなくなる頻度が高すぎる。
毛利先輩は俺のこと少しも意識していないって分かってるだろうに(自分で言っていて悲しくなってきた…)

ああでも分かっているけど何ていうか俺、周りに控えめな奴が少ない所為か、女の人に控えめに出られると弱い。毛利先輩は控えめって感じはそんなにしないからこういう風に返して来るとは思っていなかった。

控えめ過ぎるっていうのもあれだし、これ位のが俺は一番良かったりする。てゆーか俺、なんでか分からないけど控えめな子に避けられやすいし。

どうしてこうも毛利先輩は俺のストライクゾーンにばかり球を投げ込むのだろうか。





この場からの景色ですら僕は心踊るのに
(これ以上高く昇る必要も無いでしょう)

→あとがき

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