仕事終わりの帰り道、急に周囲の臭いを嗅ぎだしたカルバトスがやがて俺に顔を近づけた。
「…なんだよ?」
「スティンガーお前香水付け始めたのか?」
「なんか硝煙の臭い?残ってる気がする時は付けてる」
俺の言葉に自分の腕に鼻を付けて臭いを嗅いだカルバトスが眉をひそめながら聞く。
「そんなに臭うか?」
「カルバトスは慣れすぎなんだって」
「大体の奴がこんなもんだと思うけどな」
「カルバトスの言う大体の奴ってコルンとかキャンティとかだろ?当てにならねえから」
血の臭いだって硝煙の臭いだって何回も浴びれば段々と分からなくなって行く。裏の世界にどっぷりなカルバトスやコルン、それにジンとかなら問題無いのかも知れないがそんな訳には行かない人間は気を付けないといけない。
ほら、明美さんだってキールだって付けてるし。まあ女だからってのもあるけど。
「ああ、でもお前の親父は違ったな」
「なんか甘ったるい匂いがしてたな」
「…今は関係ないだろ。早く帰ろうぜ、これからテスト勉強しないといけないんだ」
「なにお前これから勉強?大変だなあ、高校生ってのも」
「るっせ」
「仕方ねえから車乗せてやる。感謝しろ」
「え?乗せないつもりだったわけ?」
「大体なんで高校生にもなって免許取れないんだ?」
「あ、それ俺も思った。でもここ日本だからな仕方ないよ」
「日本って変な所で不便なんだよな」