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夫の帰りが遅くなれば妻は不機嫌になるものだ。

昔は我が家の主人が遅くなることはよくあることで、その度に妻が帰りの遅い夫に詰め寄るなんてこともよくあった。
しかし今ではこの家の主人も大分歳をとってそんな事も少なくなっていた筈なのだが、

「あなた!また浮気!?いい加減にしてっ」

「だから違うと言っているだろう!俺の言うことが信用出来ないのか!?」

テスト勉強の休憩にコーラを取りに台所まで来ると調度父たちが言い合いをしているところだった。ヒステリックに叫ぶ女と怒鳴り返す男。その姿はとっくに見慣れた物ではあるが俺も少しイラつく。

自室に篭った男の方向を見ながらぶつぶつと「またあの臭い…あの女と会っているのよ…あの女…」と繰り返す女の姿を見れば前科者を信じる訳無いだろと男に対する少しの怒りと女への同情の念も浮かび上がるがその後に俺を睨み付けられると一気にその同情も消え去る。
そもそも俺が生まれたのはあの男の浮気の結果なのだから俺があの男の浮気に怒るのも変な話だ。

「なに見ているのっ!」

そうこうしている内に女の嫉妬というものが俺に向かって来るので部屋に避難。ちくしょう、だったら居間で喧嘩なんかするなよな。てゆーか俺の部屋に冷蔵庫くれ。小さい奴。そしたら夜中にコーラ取りに来たりしねえから。


こんな日曜の夜の修羅場こそ俺が餓鬼の頃からの日常で、小学生までは父親が本当に浮気していると思っていたが、今ではこの年になってもまだ夫が浮気し続けていると思う妻と疑われる原因だと分かっていても同じ女物の甘い匂いのする香水を使い続けている父親をどうしようも無い馬鹿だと思っているだけだ。

あの甘い香水の匂いを久々に嗅いだ所為か昔のことを思い出す。



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