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俺はその日、ある人に頼まれて重大任務に向かっていた。



「志保さーん。今暇?」

俺が志保さんの所に行くと大体彼女は眉間にシワが寄るし結構言うこともキツイ。
まあそこが志保さんの良いところだと思ってる。

言って置くけど俺はMじゃない。
ただ俺はまどろっこしいのが苦手だし、ましてや言葉の掛け合いなんて出来ない。
だから志保さんみたいにはっきり言ってくる人の方が好きだってこと。

まあ、志保さんはそうゆうのかなり上手いけどね。
相手の力量が分かって相手をしてくれるのはありがたいし、本当に頭いい人だって証拠だと思う。


「暇じゃ無いから邪魔しないで帰ってくれないかしら?」

「うわ、ばっさり。で、何してるんです?」

「…暇じゃ無いって言わなかった?」

「志保さんは自分で休みを殆ど取らないから無理矢理にでも休んで貰わないといけないんで、」

聞いた話によると新しい毒薬を作っているらしい。何でも体から検出されないんだとか。

「ほら、これ食べて休憩して下さい」

研究をすると他のことに気が回らなくなってしまう志保さんだから、食事を抜いたりしないように気を配る人が必要なんだと。
そしてその"気を配る人"こそ今回の俺の任務だ。


「これって…」

「志保さんこのケーキ好きですよね?」

「……この味は変わらないわね。」

「ああ、菓子って作る人に何か変化があると微妙な違いがあるらしいですね。」

つまり俺が言いたいのはケーキの作り主に変わりは無いってことだ。


「でも姉さんももっと他に居なかったの?あなた以外に」

「明美さんは俺のこと信頼してくれてんですよ」


俺に志保さんの面倒を見るように頼んだのは宮野明美ーーーーー志保さんのお姉さんだ。

俺の周りには圧倒的に年上が多いから三つしか変わらない志保さんには一方的にだけど親近感?みたいなのを持ってるし、明美さんには組織の中で一番志保さんと年が近いこともあって良くして貰ってるから二人とは長い付き合いだ。


だから二人が羨ましいぐらいに仲の良い姉妹だって知ってるし、二人の今の状態だって知ってる。


去年、明美さんの恋人が組織に入った。

そいつは中々優秀な奴で組織での地位も異様な速さで上がったそいつにボスはライと言うコードネームを与え、ついにジンと仕事をさせることになった。

そこで奴がスパイだと分かった。

もちろん組織は奴を追った。すると奴が教えていた諸星大という名前は偽名で赤井秀一というFBIの捜査官だったことが分かった。

おそらく、組織の重要人物に近いが、本人の地位は高くない、そんな明美さんはFBIから見て取り入り易かったんだと思う。

でもそれは組織から見てもどうにかしやすいと言うことであって、赤井秀一から完全に逃げ切られて始末することも出来ない今、一番危ないのは明美さんだ。

事実、最近は組織は赤井秀一に騙された明美さんを組織にスパイを潜り込ませた女として処分する機会を狙って志保さんとは会わせないようにしているし、志保さんも彼女のことが有るから組織に言われた研究をただひたすら続けるしか無い状態だ。




「明美さん、志保さんのこと心配してますから、せめて息抜きぐらいはするようにして下さい」

「煩いわね、あなたに言われなくても分かってるわよ」

「なら良いんですけど。」



いつかの思い出と踊る
(未来を見る目は塞いだまま)


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