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寮の一番の得点源である魔法薬学を終え、闇の魔術に対する防衛術―ロックハートの授業だ。
正直言って私はあの書店で彼を見た日から彼の授業にはあまり期待していない。
あの自分が目立つ事だけを考えているような性格に迷惑をかけられて授業が始まる前から嫌悪感しかないのだ。
それにこの教科書。
夏休みに読む教科書の中でもこの教科は毎年先生が変わるから特に注視しているのだけれど、今回の教科書はロックハート先生が自分で出した自伝ばかりだ。自伝は教科書じゃない。
内容も内容で魔法生物との戦いのシーンなんて何処のマグルが書いたのかと聞きたくなるくらいありえない。
(…それでも先生は先生。それにこの教科は就職にだって必要になる可能性が高いし、今年一年我慢するしかないわね…)
授業が始まると部屋から出てきたロックハートが教科書を出すように言った。更に既に教科書を開いている生徒には本を閉じさせ、表紙を見せて言った。
「やあ。君達がこのホグワーツで幸せな生徒だね?」
疑問符が教室にいた生徒全員から浮かんだ気がした。
この目立ちたがり屋の楽しいジョークのつもりなのかも知れないが、そんな訳の分からないものに生徒が(ましてやスリザリンが)付き合うとでも思っているのだろうか?
ロックハートは教室が薄ら寒い空気に包まれたことが不思議でならないような顔をした後紙を配り始めた。
「さあ君たち、君達はこの価値ある私の授業を一番初めに受けることの出来る非常に名誉のある―最高の名誉と言ってもいい―幸せな生徒なのだよ。
今日は初めに簡単なテストをやろうと思います。―本当に、簡単な、私の本を読んでいる人だったら誰にでもわかるテストだ。今から三十分。
はい、始めて」
そういって配られたテストは延々三ページ。しかも全てがロックハートの好きな色だとかそんな物だった。
ロックハートはテストを回収すると、その場でパラパラと答案をめくった。そしてうーんとなにやら含みのある唸り方をしてから話し出した。
「いやはや、実に嘆かわしい。満点が一人もいないなんて。君達はもっと私のことを知る必要があるね」
斜め前後ろの席からロックハートには聞こえていないみたいだけど舌打ちが聞こえた。舌打ちをしたリックを見るとこっちの視線に気付いたリックがノートの片隅に何かを書いた後、私のノートにリックの文字が表れた。
“歴代ワースト一位”
自分が思っていたのと同じ言葉に小さく笑って私もノートに返事を書いて魔法で送る。
そんな様子に気付きもしないでスマイルがどうのだの言っているロックハートの声を聞いてリックはなんともいえない顔で私に笑いかけた。私もおなじ様な顔をしているのが見なくても分かる。
“あんな奴の何処が人気なんだ?”
“そもそも本当に人気あるの?”
“うちの姉さんはコイツの本を買い込んでる”
“…ご愁傷様”
お互いロックハートの話を聞いていても仕方が無いとしばらくノートで会話を続けているとリックの前にロックハートが立った。
「えー、君は?」
「リック・アッカーソンです」
「アッカーソン、何をしていたのかな?」
「あー、ロックハート先生の偉大な業績をノートに書いていました」
苦し紛れに言い訳をするリックによっぽど自分の話を聞いていなかったことが赦せなかったのか、もう一度あのテストの問題を聞き始めた。
「私の好きな色は何だったかな?」
「あー、っと…ライラック色ですよね?」
「私のひそかな大望は?」
「えーと、この世界から悪を追い払い?ロックハート・ブランドの整髪剤を売り出すこと」
「なんだ、分かっているじゃないか!私はてっきりあそこのお嬢さんに視線を送ることに夢中になっているとばかり思っていたが勘違いだったようだ。残念なことにテストではあまり良いとは言えない成績だが、こんなにも私の功績について学ぼうとしている!」
「え?ああ、はい」
ロックハートがリックのノートを持ち上げて必要以上に歯を出した笑顔のままリックと握手をした。
よかった。面倒なことにならずにすんだみた、
「そして、そこの綺麗なお嬢さんの名前は?」
………この手の性格の人は自分の話を聞いていない人は見逃さない。
「…レミ・ブラックです」
ロックハートの目が一瞬冷たく光った気がした。
冷たい目から元に戻したロックハートはいつもと同じニコニコとまるで今日は最高の日だといわんばかりの笑顔を貼り付けて此方によって来て言った。
「君があの有名な、ブラックの子なのかい?」
その言葉に教室中の空気が凍りついた。
さっきとは違って確信的だ。
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