ハリポタ(長編) | ナノ
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書店に向かっている途中から人が多いと思っていたけど、書店に着くと驚くほどの数の人だかりが出来ていた。

「なんで今日こんなに人が多いのかしら?」
「…ほら、あれさ」
理由はドラコが指差す上階の窓に掛かっている大きな横断幕ですぐに分かった。

【サイン会 ギルデロイ・ロックハート 自伝「私はマジックだ」 本日午後12:30~4;30】

「さいあく・・・」
店に入ればロックハートの大きな写真がぐるりと貼られ、人垣に向かって一斉にウインクし、輝くような白い歯を見せびらかしていた。

人を避けてレイチェル・アプリコットを探していると

「もしや、ハリー・ポッターでは?」
後方から叫び声が聞こえて振り向くと興奮した囁きが広がり、人垣がパッと割れて道を開けた。え、これ何てモーセ?
呆然としているとロックハートが列に飛び込み、ハリーの腕を掴み、正面に引き出した。人垣が一斉に拍手して、カメラマンがロックハートとハリーの握手している様子を撮ろうとしている。

その間に会計を済ませようとしたけど、店員までハリーを見ている。

「んっ、ん゛」
「あ、申し訳ございません!」
会計を終えてハリーを見ると本当に恥ずかしそうに顔を赤くしている。本当、ハリーのああいうとこ好き。

一方のドラコにはハリーが満更でもなさそうに照れているようにでも見えているのだろう。ハリーを見る目に憎しみすら見える気がしている。
ルシウスさんはルシウスさんでウィーズリー氏を見つけてドラコと同じような顔をしている。

もう、親子揃ってなんて顔してるのよ。
あああ、ドラコったらハリーに絡みに行っちゃたし。

「ルシウスさん。どうします?」
「フッ調度いい。挨拶しておきたい奴がいるからな」


えー。行くんですかー?


「ここはひどいもんだ。早く外にでよう」
ハリーに近づくとウィーズリー氏の声が聞こえてきた。良かった、帰るみたいだ。これで面倒なことにならないで済―

「これは、これは、これは―――アーサー・ウィーズリー」
ルシウスさんはドラコの肩に手を置いてウィーズリー氏に挨拶をした。

……どうやらマルフォイ家の人間は嫌いな奴ほど絡みに行く方針らしい。

「ルシウス」
ウィーズリー氏は首だけ傾けて素っ気ない挨拶をした。
「お役所はお忙しいらしいですな。あれだけ何回も抜き打ち調査を…残業代は当然払ってもらっているのでしょうな?」

ルシウスさんはウィーズリーの女の子(女の子もいたの!?)の大鍋に手を突っ込み、豪華なロックハートの本の中から、使い古しの擦り切れた本を一冊取り出した。「変身術入門」だ。
ちょっとこれは幾ら何でも可哀想に思う。せめて一人っ子の家から貰って来ればいいのに…

「どうもそうではないらしい。なんと、役所が満足に給料を支払わないのでは、わざわざ魔法使いの面汚しになる甲斐がないですねぇ?」
ウィーズリー氏はロンや女の子よりももっと深々と真っ赤になった。


そろそろ二人の喧嘩を見ていられなくなってきたし面倒だけど止めた方がいいかしら?




「おや、なんと。スリザリンのレミ・ブラック女王陛下ではありませんか!」
そんな時、ウィーズリーの双子が目敏く私を見つけてきた。

どうやら私も嫌いな奴と絡まなければならないらしい。

「なによ。グリフィンドールの悪戯ねずみが」

「いやはや、このような鼠の溜り場に」「女王がいらっしゃるとは」

私はこの双子の厭味ったらしい喋り口が大嫌い。学校じゃ私を見つける度に絡んでくるこいつ等は本当に鬱陶しい。「そうね。本当に」
「あそこの鼠の親玉なんか……あら」

双子の父親のルシウスさんに跳びかかっていた。
つられて自分の父親がルシウスさんともみ合いになっているのを見た双子のどちらかが「やっつけろ、パパ!」と叫んだ。

「アーサー、ダメ、やめて!」ウィーズリー夫人が悲鳴をあげた。

人垣がサーッと後ずさりし、はずみで本棚にぶつかる。

さっきロックハートに気を取られていた店員が焦って止めに入るも抑えられる様子はまるでない。この店員はいつ店の役に立つ予定なのだろうか。そこへ、ひときわ大きな声がした。

「やめんかい、おっさんたち、やめんかい――」

ハグリットだった。ハグリットが二人を引き離すとウィーズリー氏は唇を切り、ルシウスさんの目にはぶたれた痕があった。ルシウスさんはまだ持っていた変身術の古本を女の子に突き出しながら

「ほら、チビ――君の本だ――君の父親にしてみればこれが精一杯だろう――」

「…………」

ハグリットの手を振りほどき、ドラコと私に目で合図して、ルシウスさんはさっと店から出て行った。
ルシウスさんを追いかけると後ろからロックハートの声が聞こえた。

「是非この喧嘩を記事にしてくれたまえ!私の本を取り合いって喧嘩になったなんて記事が載ればいい宣伝になる。よろしく頼むよ」

ッチ。いけない。思わず舌打ちをしてしまった。


少し考えてから方向転換して記者を追いかけ、人通りも少なくなった道で声を掛けた。


「あの、少しお時間よろしいでしょうか?」








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