学アリ | ナノ
QLOOKアクセス解析
01

――アリス学園
そこはアリスと呼ばれるいわば超能力的な才能、天賦の才能を持つ者のみが通える究極の一芸入学の天才が集まる学校である。

「こんにちはー!…って、誰もおらん」

今日は週に一度の能力別クラス。
無効化のアリス−他人のアリスを無効化するアリス―を持つ佐倉蜜柑はいつものように特別能力系クラスを訪れていた。

「んー翼先輩達どうしたんやろうか?」

普段彼女が来るときには既に何人かの先輩が集まっているのだが今日は誰ひとりいない。どうしたものかと一人教室で呆けているとガラガラッと音が鳴り、一人の少年が入ってくる。蜜柑がその少年を見ると制服は中等部、先輩の筈だ。しかし彼を特力系のクラスで見たことは無い。こんな人おったやろうか?そう今までに会った人達を思い出して見るがこんな人はいなかった。
普段親友から散々馬鹿と罵られる彼女でも確信出来る。それ程に少年の出で立ちは奇妙であった。

片手にキャリーバックを引いて、もう片方の手に握ったあの十秒で食べられるいうゼリー飲料のようなものを飲んでいる。
町にはいるかも知れないが、学校では見るはずも無い姿だ。

ちなみに今蜜柑が上げた特徴は全ていつもそうだとは限らないものばかりであることがまさに彼女が馬鹿と罵られ続けられる所以と言えるだろう。

まあそれを置いておいても彼女と彼は一度も会ったことが無いので話を続けさせて貰うとこの奇妙な出で立ちの少年も初めて見る少女(少年と少女などと言ってもその歳の差は四つ五つは離れている。にも関わらず互いに互いを少年、少女と言えるのは、この二人共がまだその枠からでるには程遠い子供であるからであることを忘れないで頂きたい)誰もいないと思っていた教室によく分からないちんちくりんがいたことに驚き、固まっていた。

「先輩、見たこと無いけど特力の人?」

蜜柑が少しの怖さと多分な興味から話し掛けると意識を取り戻した少年は「ああ、一応」と返した。

“一応”の意味は分からなかったがとりあえず先輩は先輩だと言うことで質問を続けることにした。

「今日、誰も来んのですけど、なんでですか?」
「…聞いていないのか?今日はこの部屋は使えないぞ。別の部屋で活動することになってる」
「ええー!ナル先生何も言ってくれんかった!」

ナル先生酷いわ、皆どこ行ってしまったんやろ?ぶつぶつと呟く蜜柑を見て目を少年は見張った。「お前、鳴海のこと知ってんの?」
「だってナル先生は担任やもん」
「ふーん」

「なあ、あんた誰?」
「俺?俺は水野透。お前は?」
「ウチは佐倉蜜柑!それより、水野先輩はなんで此処におるん?今日はここ使わんのやろ?」

透の考え込んむ様子にどうしたのか蜜柑が聞いてみると透はしゃがんで蜜柑と目線を合わせて蜜柑の顔を除きこんだ。

(わあ、この人変わった目しとる…)

長めの前髪から覗く瞳は黒かった。
蜜柑の知り合いの殆どの目は黒いのだが彼の目は本当に黒い。自分や他の人の目には茶色や灰色が混じっているものだが彼の目はそれが無い。真っ黒なのだ。


「おい?」
「はっ、ぼーっとしとった!って何してるんですか透先輩!?」

目の前でパタパタと手を振られてぼうっとしていた意識が引き戻された。
そして透の顔が驚くほど近くにあると思ったら透はしゃがんだまま今度は首筋に顔を近づけて匂いを嗅ぎ始めた。

蜜柑がびっくりして離れると透は“何か悪いことでもした?”とでも言うようにきょとんとして首を傾げた。
「ん?、鳴海が持ってきたってことだろ?」
「は?」
「俺小学生に手え出す気は無いんだけど、お前すげえ旨そう匂いするよな…うん」

そう言ってもう一度蜜柑を引き寄せて匂いを嗅ぐ透。
旨そうな匂いってどうゆうことやろか?よく分からん。と蜜柑が今度は蜜柑が首を傾げているとバタバタと走る音が聞こえて勢い良く扉が開かれた。

蜜柑がその大きな音に驚いて扉の方を見ると音の主である安藤翼が走って蜜柑を引き寄せ、透から遠ざけた。


「透!こいつは違う!食うな!」

(は?
食うなってどうゆうことや?それにさっき旨そうって、まさか、ウチ食べられるとこやったんか?
いやいや、そんなまさか、)

「おい翼、物騒なこと言うなよ」

(ふう、良かった。勘違いやったわ。)

「食べるなんて流石の俺でもしないさ。確かに今こいつの血、ちょっと飲んで見ようかと思ってたけど流石にガキの血は飲む気が起きねえわ」

(え)

「…やっぱり食う気だったんじゃねえか」
「だから、やめたんだって。しかも食うじゃねえし、飲むだし」

(え)

「ええぇぇー!?」

「あ、爆発した」
「おい!蜜柑!大丈夫か!?」





「た、た、食べるって、ウチ食べられそうになってたん!?」

驚いて大声を上げる蜜柑に透は何でも無いように笑いかける。

「だーかーらー、やめたんだって。それに食べるじゃなくて飲むだからな」

透がなっ?と言って頭を撫でようとするとザザッと後退る。

「あっあかん!」
「あ、避けられた」
「当たり前だろ。ほら蜜柑、怖かっただろう」

冗談半分で頭を撫でて慰める翼が“良いだろう”と自慢気な顔で透を見る。

「俺ってなんでこう子供に懐かれないんだ?」
「今のはお前が悪いだろ」
「ははっそうだな」

「まあ透の後輩が懐いたらそれは奇跡だ。諦めろ」
「この兄ちゃんに後輩、一人も懐かへんのですか?」

そう言って笑う翼を見て、"どの後輩にも懐かれないなんて少しかわいそうだ。"とでも言いたそうな目をした蜜柑が聞くと翼は「こいつの後輩、棗だぞ」と懐くわけが無いだろうと言った。

「え、え?ってゆうことはこの人危険能力系!?特力や無いの!?」
「特力だって、一応」
「さっきから一応ってなんなん!?」
「こいつは危力兼特力なんだよ」

「けん?」

「そっ、どっちにも入ってるってこと」
「へー…って棗の先輩!?」
「お、棗のこと知ってんのか」

さすが棗。有名人だな。自分の事の様に少し誇らしげな呟き方をしている透だが、蜜柑のパートナーは棗なのだから知っていて当然であること、棗への認識は悪い意味でしか無いことを知っていない。

「知ってるってこいつのパートナーは棗だぞ」
「あ?棗ってパートナーいたのか?」
「お前本当に何も知らねえな」
「仕方ないだろ。久しぶりの学園なんだから」
「……」

蜜柑は今まで日向棗という人物は謎だらけだと思っていたがこ水野透という人物も随分と訳の分からない人物で謎だらけやと思った。何処か棗に似とる。いや、棗がこの人に似たんやろか?一人自問自答していると、蜜柑と翼、そして一応透の顧問である特別能力系担当の野田が入ってきた。

「透君もう来ていましたか。すみませんねえ」
「いや面白いのも見つけたしいいよ」
「面白いの…?ああ、彼女ですか」
「何の能力?」

すごく旨そうなニオイがした。

そう呟いた透に対して野田は曖昧に笑っただけだった。


back* #next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -