※なっちゃんのことが好きな女の子Aの視点でお送りします。












なんなんですかあの2人。付き合ってるんですかそうなんですか。



バレバレですよ、



息ができないくらいこの音楽という環境の中で行き詰まっていたときに、あなたのさりげない優しさに惹かれてしまった。


それはよくありがちなパターンだった。それなりに音楽の才能があったし目指してるものもあったから超難関のいわば狭き門なこの学園に入学した。受かったと知ったときは夢かと思った。期待に胸が弾んだ。でもそんなものは入学して早々脆くも崩れ去ってしまった。“自分より才能のある人がたくさんいる”世界。難しい課題。必死になってついてこうとしてるのに逆に離れていくような、そんな気さえした。そんな落ち込んでるときに声をかけてくれたのが四ノ宮さんだった。彼にとっては何気ないことだったのだと思う。実際、別に相談に乗ってもらったとかでもないし励ましの言葉をもらったわけでもない。しかしあの彼が持つ独特な雰囲気、ふんわりしたあたたかさがそのときのわたしには救いに思えた。それから彼をよく目で追うようになった。どんどん惹かれていってることは自覚していた。しかし目で追うようになってからひとつわかったことがある。

“翔ちゃん!"

頭の中で四ノ宮さんがある人を呼ぶ声が反響する。翔ちゃん…Sクラスの、来栖翔くん―――。


以上、シリアスモード終了。あ、自己紹介まだでしたね!でも名乗るほどの者でもないんでそこんとこスルーでお願いします。で、今ですよ今。まあわたしは今でも四ノ宮さんのことは好きなんですけど、好きなんですけどね…。


「翔ちゃーんっ!!」
「ぐぇっ…!死ぬ…ッ!力!おま、力入りすぎ…!死ぬ!!!」
「…あ、すみません翔ちゃん!思わず!」
「思わずで俺を殺す気かお前は!!!」


わたしの目の前で絶賛展開中のこんなやりとり、つまり四ノ宮さんが来栖くんにタックルかまして抱きついてるという状況。日常茶飯事ですよふつうに。あと、


「翔ちゃん、今日こそは“あれ”、着てもらいますからね!」
「だっから着ねえって何回言やあわかんだよ!着ねえからな!ぜってえ着ねえかんな!」
「え〜。翔ちゃんのケチ!」
「ハッ。なんとでもいえ!」
「いいじゃないですかぁ〜くまさんパジャマの一着や二着!僕なんて着たくてもサイズないんですからね!」
「知らねえええ!!だからって俺に押しつけんな!」
「うーん…。これは…実力行使しかなさそうですねえ」
「…お前、サラッと怖えこと言うなよ」


…なんなんでしょうこの雰囲気。なんていうんだろ、あー、認めたくない感情が邪魔をしているけどでもこれどう見ても男の子同士でする会話じゃないっていうか彼女にコスプレしてほしいって迫ってる彼氏の図っていうかもうはっきり言っちゃうけどさ!

この2人!ぜったい!付き合ってるだろ!


「翔ちゃんぜったい似合うのに〜もったいないですよぉ」
「いやいや似合いたいともおもわねえし」
「だって翔ちゃん女の子の格好も似合うんですから、動物ファッションが似合わないわけないんです!」
「力説すんな!つか女装のことはいうな!またお前のせいでトラウマできたんだからな!」
「また着てくださいね!今度は2人きりのときに、ね?」
「一生着ねえよ!!」


そんなこと言わないでくださいよーなんて言いながらまた来栖くんに抱きつく四ノ宮さんを見て、ああこの人ほんとに来栖くんのこと好きなんだなあと実感する。なんというかもうデレデレ?みたいな。てか……え、女装…?女装とか聞こえてきたんですけど幻聴ですかどうなんですか?この2人一体なにしてんの…。
四ノ宮さんは来栖くんのどこが好きなのかな。わたしと来栖くんの違いって一体なんなんだろう。身長ならわたしだって女子なんだしふつうに低い、音楽はもちろん好き、来栖くんほどオシャレにはなれないけど人並みには外見に気をつかってるつもりだし…って考えてみるけど無駄なんだよね、こういう考え自体。だってやっぱりどう考えたって来栖くんとわたしは別物。四ノ宮さんを見ていると必然的に来栖くんのことも視界に入るからよく観察するようになった。あの可愛らしい外見からは想像つかないほど男気に溢れてるというか、素直に優しい人だなって思える。なんか包み込むような優しさというより全身で相手にぶつかってわかりあおうとするような人だなって。四ノ宮さんもそういうとこ好きになったのかなぁー。

…って全部憶測なんですけどね!ただ友達としての好きって感情かもしれないし付き合ってるとかいうの飛躍しすぎかもだけど、でもわたし、確実に来栖くんにちょっと嫉妬してる。うらやましいなあって思う。そうわたしに思わせるってことはやっぱりそういうことなんじゃないかなぁって思うんだけども。



お2人さん
(ある女生徒Aが見た2人の実情)



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早乙女学園に入学したらこんなこともできるんですねわたしもなっちゃんと翔ちゃんがいちゃらぶしてるとこ近くでみたい。


20110805





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