「おっ、翔〜!こっちこっち!」


授業のあとあれやこれや用事を済ましていたら、昼食のことをすっかり忘れてしまっていた。まわりに少し出遅れるかたちで食堂に向かう俺。人でごった返す食堂に入ったとたん聞こえた、自分を呼ぶ声。あの声は音也だろ。キョロキョロとその声の先をさがす。あ、音也発見。すかさず俺も音也に反応を返そうとしたのだが、


「おと「翔ちゃああああああん!!!!!!」


あー……なんかやっかいなのきやがった…。


「うげっ…!ちょ、ギブギブギブ!!ギブっつってんだろ那月!!!」
「はあ〜あいかわらずちっちゃくて可愛いですねえ翔ちゃんは!翔ちゃん翔ちゃん!」


声をかけようとした先に音也がいたはいいがどうやら音也だけでなくAクラスの仲良しグループが集結してたようだ。イコールあいつもいるわけで。こういう状況につながるわけで!


「…あのなあ、那月」
「はい!なんでしょう翔ちゃん!」
「あれ?翔なんか今日いつもより大人しいね」
「ほんとだー!いつも過剰なくらい小さいってワードに反応するくせにねえ」
「…突然変異か」
「と、友ちゃんも聖川さんも翔くんに失礼なんじゃ…」
「どうしたのさ、翔」


未だ那月に抱きつかれた状態の俺にAクラスメンツが好き勝手に発言をあびせる。つーかなんか聖川の冷静さが胸に突き刺さるのはなんでだ…!突然変異ってお前…俺をなんだとおもってやがる!!


「いや俺いろいろ考えたんだけどさ、将来のこと見据えるとなんかちょっと許せるかんじになってきたんだよ」
「将来?」
「そ。俺たぶん2年後くらいに那月の身長…とまではいかねえかもしんねーけど175cm以上は伸びるとおもうんだ。おもうっつーか伸びんだよ。だから那月が“ちっちゃい翔ちゃん可愛い!”とか言えんのも今のうちってわけだ。わかる?」


だから、そういう先のこと考えてると那月のこの行動に対しても多目にみれるようになってきたんだよなーとか言いながらヤツらの顔をみる。……………え、なんだそのポカーン顔。


「…は?」
「え?」
「いや、“え?”はこっちのセリフよ!……もしかして、馬鹿?」
「馬鹿じゃねえよ!超真剣!」
「今の歳からそんなに伸びるものなのか、背というものは」
「伸びる!高3くらいで急に伸びるヤツもいるらしいし大学生で伸びるヤツもいるらしいぜ!」


聞いたはなしによると、ほんと身長小さかったヤツが高3の春あたりから10cmくらいポーンと伸びただとかいろいろあるらしい。要は個人差だよな。いつ伸びるかなんて人によって違うんだよ!


「てか俺前よりちょっと背ぇ伸びたとおもわねえ?ぜったい伸びてるぜこれ」
「え?」
「は?」
「いや、だから身長だって」


………本日2度目のポカーン顔いただきました。


「あ〜…うん、伸びてない…、とおもうよ?」
「同感だ」
「伸びてないよねどう考えても。春歌もそうおもうでしょ?」
「えっ、や、わたしはその…」
「翔ちゃんは変わらず可愛いですよぉ!」


…なんつーか予想通りっぽい反応してくるコイツらに殺意すら覚えました、はい。どう考えても悪意しかねえだろテメエら…!しかも最後の発言今のはなしのながれとぜんぜん関係ねえじゃんかよ!!マジふざけんな!!つーか伸びてねえか…俺の錯覚かよ……そっか…、なんか泣けてきた…みんなひでえし。発言やたら辛辣だし。


「でもでも!まだ背が伸びるっていう無謀なことをあきらめてない翔ちゃんはかっこいいです!」
「おい、無謀ってなんだよ無謀って!」
「僕はねえ翔ちゃん。ちっちゃくて可愛い翔ちゃんはもちろん好きですけど、翔ちゃん自体が大好きだから身長とかそういうのは関係ないんです」
「なっ…!は…、ちょ、意味わっかんねえなに言ってやがるテメエは!」
「だから、翔ちゃんが大好きってことです!」
「ことです!、じゃねええええええ!!!しかも抱きついたまま言うなああああああ!!!」


またコイツは軽々しく好きとか言いやがって…!てかもうなんなんだよこの状況…どう考えても男同士でやることじゃねえよ!とりあえず音也に助けを求めてみるけど「あいかわらず仲良しだねえ〜」でばっさり斬られた。この天然…!どこをどうみたらそうなるんだよ!ほかのヤツもほかのヤツで見てみぬふりだしよ。だれでもいいからこの状況にツッコミやがれ!なんでこれが日常として受け入れられてきてやがんだよ!!


「でもやっぱり翔ちゃんはちっちゃくてこそ翔ちゃんだとおもうんですけどねえ」
「その、俺イコール小さいみたいな方程式ヤメロ!」
「え〜……」
「っだーもう!!!ぜってえ大きくなる!那月抜かす!そんときはお前ら全員見下ろして笑ってやる!!!」


「…大きくでたねぇ、翔」
「しょ、翔くんがんばってください!」
「身長でも翔ちゃんのライバルになれるなんてしあわせです!」
「無理だとおもうけどねえ〜わたしは」
「来栖、無謀な願望はやめておいたほうが身のためだぞ」
「ッ〜お前らなあ!!!!!」


みんなひでえ…!だから毎回毎回聖川は何気に辛辣すぎる…!胸に刺さる…!そんで那月はなんなんだよまたひとりズレた発言しやがって!てかやっぱり聖川ひでえ!

そのあともなんやかんやで身長のはなししてたけど背高いヤツらばっかだから俺には縁のないはなしすぎて泣きたくなった。なんだよちょっとしゃがんでくぐらないとあのドアの上に頭ぶつけそうになるよなとか俺一度もないんですけどむしろ背伸びしてたってあのドアくぐれますけど!


「マジみてろよお前ら…!」
「まあまあ翔ちゃん、落ち着いて!」
「落ち着いてられっかあああああ!!!」




身長願望エトセトラ
(今日の教訓:背が高いヤツとはもう身長トークなんてしねえ。)





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いっそトキヤとレンも参加させればよかった。



20110804





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