英仏

■2012仏誕



7月1日、カナダの家へ行く。途中で買った花束を手に、彼を訪れる。材料を用意して、夕飯とケーキを作る。座っていろと言っても聞かないカナダが手伝ってくれる。何だかかわいくて仕方がなかったので、ケーキをあーんとしようとしたら、照れを隠そうとしないカナダに愛を感じる。思わず襲いそうになり、クマ二郎に殴られる。顔に傷ができなかったのは、幸いだ。

7月4日、カナダからアメリカへ南下する。お祭り状態なアメリカと出会えたのは、日も暮れ始めてから。ひたすら物をねだられる。家に上がり、やはり夕飯を作る。アメリカが相手だと作り甲斐がある。いったい、何品作らされたか、覚えていない。しかし、すべてを平らげるアメリカに、悪い気などしない。冷凍庫からアイスクリームを取りだし、一手間加える。やはり美味しそうに食べるアメリカに満足する。

7月7日、帰宅する。シャワーを浴びて、ベッドに沈む。おやすみなさい。

楽しい日はあっという間に過ぎ去り、あとに残ったのは仕事という現実だった。スーツに身を包んで、フランスは家を出た。仕事と言えど時間は決まっているのだ。定刻になるまでの一頑張りだ。張り切り始めたのは7月13日。明日は、7月14日。浮かれていると言われれば、否定はできない。仕事中も、ふと思い出して笑い出せば、ドイツに指摘された。注意力散漫だそうだ、違いない。
「おい、フランス、この書類だが、」
「ドイツは祝ってくれないの?」
差し出された書類を受け取りながらフランスが言うと、一緒、ドイツが調子を乱したのがわかった。それがおもしろい。そこで終わらず、調子づくのがフランスだった。
「お兄さん、けっこう楽しみにしてたんだけどな」
「仕事中だぞ」
「都合が悪いからって、日本やイタリアは先にプレゼントをくれたな。日本からはフランス語訳の新刊、イタリアはパスタにチーズ」
「よかったな」
「ものじゃないなら体でもいいんだぜ、むしろ大歓迎」
「不謹慎だぞ」
ドイツがぎろりとにらんできて、さすがにフランスも黙った。技をかけられそうな勢いだった。祝日の前日に、自らすすんでアザを作りにいく必要はない。しかし、それでも諦めきれないフランスが、わざとらしい視線を送ると、ドイツも諦めたらしい。イタリアの世話で慣れているのかもしれない。
「おい」
「ん」
不器用なやつのキスは、なかなかおもしろかった。無論、頬だけど。

それはあくまで前夜祭のようなもので、メインは今日なのだ。7月14日、今年の祝日も無事に始まった。革命記念日の今日のパリは、いつも以上に賑やかだった。飾られたシャンゼリゼ通りを軍事パレードが進んでいく。
少し離れたところからそれを眺めて、フランスは上機嫌でいた。
「花火がうるせぇ」
「お前のとこのダイヤモンドジュビリーとそんなに変わらないよ」
「馬鹿言うな、俺のとこの方が格式高いんだ」
やるか? お、受けてたつよ。
腕を半端に構えてみせて、フランスは笑った。ちっ、とわざとらしく舌打ちするイギリスが、フランスにはおもしろかった。今日だけは、このパレードが終わるまでは、イギリスはフランスに手を出さない。とは言っても、更新する凛々しい軍人を見ながら「いい尻してるな」などと呟く彼には、さすがに苛立ちを隠せなかった。
やがて行軍が見えなくなったとき、フランスはイギリスに向き直った。それとなく笑みと、わずかに熱のこもった視線を向けた。わざとやってるくせに、妙に奥手になって、顔を赤らめるのだ。これはなかなか貴重な表情で、イギリスは自分だけが知っている腐れ縁の顔だと自負している。わざと頬をぱちんと叩いてから、驚き目を伏せるフランスの額に唇を寄せてみた。

はたから見れば、ただのリア充なんだよ。



「なんなんだよ、フランスのくせに」
「カメラカメラカメラ……、あったわ」
「なにやってんだよ、ハンガリー」
「決まってるでしょ、髭だけ修正してネタにするわ」
「おい坊っちゃん、こいつをどうにかしろ……って、どこで迷子になってやがんだよ」



 

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