ベリーベリーショートラブストーリー




二月も下旬に差し掛かって、スーパーでは昼間でも学生アルバイトの姿があった。何だか微笑ましい。
「一目惚れしました。好きです、付き合ってください」
「……ごめんなさい」
帰り道で日本が見かけたのは、なかなか懐かしい光景だった。今まさに勇気を出して愛の告白をした男子高校生に、気まずそうに断りをいれて立ち去る女子高生の姿だ。かわいそうに、と思う。立ちすくむあの背中が寂しい。がんばれ、青春はまだ終わってませんから、と日本は視線だけで訴えた。

帰宅すると、庭先でオランダが煙草を片手に立っていた。
「おぅ、早かったな」
「オランダさん、急にどうしたのですか」
「何となく、や」
とにかく、日本は玄関から彼を中に招き入れた。まだ外は寒い。体調を崩されては困る。
いつもの居間に、いつもの灰皿を、日本は慣れた手つきで用意した。ちょうどスーパーで買ってきたみたらし団子がある。値引き品なのはご愛敬だ、皿に移し変えれば分からないはずだ。急須でお茶も淹れて、日本もようやく席についた。
「バレンタイン、まだやったろ」
お茶に手を伸ばす前に、オランダはコートのポケットからラッピングされたクッキーを取り出した。無論、日本へのものだ。同性からもらうことに不馴れな日本は、どぎまぎしながらも、ありがたく受け取った。今年も差し入れのような感覚で友人には渡したが、都合悪く日本には渡せなかった。
「そういうわけやざ。俺はみたらし、もらっとく」
まさか、な、と日本は苦笑した。手元のクッキーを見た。さくさくしていて美味しそうなクッキーが三枚、何となく、見覚えのあるメーカーだった。そのお返しが、値引きされたワンコイン、五百円ではなく百円でお釣りがくるみたらし団子だ。いたたまれない。
「……今日、夕飯を召し上がっていきますか?」
「? 珍しいんやな。ほな、頼むわ」
言えない。すでに怪しまれてはいるけれど、口には出せない。
買い物をしたばかりで、冷蔵庫の中にはそれなりに余裕がある。何とかなる。少しだけ、豪華にしよう。そうだ、炊き込みご飯はいいだろう。茸……、いや、魚にしよう。
急に黙り混んで考え事をする日本を、オランダは余計に怪しく思ったに違いない。








レイラの初恋



 

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