他愛もない話ですよ、愛について語ってみたかったのです


 ――ずっと、ずっと一緒ですよ、約束しましょう。
そんな言葉は所詮戯れ言だ、とフランスは知っていた。だから、何度愛の言葉を囁かれても、彼は笑うだけでお茶を濁した。愛されたいけれど、愛され方が、いまいちわからない。

「私はあなたを愛しているのかどうか、よくわかりません。あなたのために戦っていますが、それがあなたへの愛に繋がるのかづうかは、私にはわかりません」
はっきりと、彼女は言った。愛がどうのこうのと言い出したフランスに、彼女も正直なことを言ってくれたのだ。
「あなたは、私たちを、愛しておられるのですか?」
少し迷ってから、フランスはそれを肯定した。
「では、私たちに、愛されたいのですか?」
「そりゃ、うん、愛されたいよ。だって、寂しいじゃないの」
至って真面目に聞いてくるものだから、フランスはどぎまぎしていた。今、愛の話をしているのだったか。純情とも、初とも、違う。「オルレアンの乙女」は幼いのだ、きっと。だから、彼女は恥じらうわけでもなく、わからないことを聞くだけの感覚でいるのだ。彼女には敵わない、ある意味で。フランスは逆に恥ずかしくなってきていた、わけがわからない。
「それも、そうですよね。私には家族がいますが、彼らは私を愛してくれました。もちろん私も彼らを愛しています」
「……俺、君の家族だったら良かった、と思うよ」
「それは、もったいないことです。あなたと家族だなんて」
「その真面目さ、嫌いじゃないよ」
首をかしげる彼女に苦笑していたところで、上司からのお呼び出しがあった。もう少し彼女とお喋りしたかったな、とぼやきながら、フランスはその場をあとにした。

それからしばらくして、フランスは悲しみに暮れていた。彼女が自分のもとから消えたから、酷い目に遭っていると知ったからだ。少女の柔肌が、傷ついていたら、どうしよう。不安でしかたかがない。きっと、今頃泣いている。
「今、君とずっと一緒にいたい、と思ってる」

「できれば、君と、もっと多くの時間を過ごしたかったな」
私もそうしたかったです、と聞こえるはずのない声を聞いた。
「君を導いた天使や聖女は、君を見捨てるんだ。いや、そもそもいなかったんだ、あぁ」
フランスは動き出した。しかし、結果は芳しくなく、彼女との別れは、刻一刻と近づいていた。

縄に繋がれた彼女を見た瞬間、思わず叫び出しそうになった。それを誰かが止めた。フランスのことを知ってか知らずか、誰かが同情の目をしていた。
「祖国……フランス……、帰りたかったです、あなたのもとへ……」
肉体の焼ける異臭と、彼女の泣き声を、フランスは震えながら感じていた。彼女の服が燃え付き、声がなくなったとき、フランスはもう涙が止まらなくなっていた。

大切だったのだ、大切な存在だった、愛していた。彼女がフランスを愛していてくれたかどうかはわからないままだけれど、きっと悪いようには思われてはいなかった。今はもう、それだけで十分だ。
ある日の午後、カフェで善良な市民とお喋りをしていた。ごく普通に笑って、おいしいものを食べている今が、幸せだと思っている。可愛らしい容姿の少女が、フランスの話の続きをせがんだ。
「いやぁ、愛されてるなぁ、俺」
「もう、調子乗らないでよ、お兄さん」
聖女の存在は、まだここにある。そう気づいたとき、フランスは少しだけ、気分が楽になった。




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雰囲気です



 

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