おはようラブソング



同じベッドで眠っても、先に起きるのは、決まってフランスだった。一緒にベッドに入っても、イギリスが起きたときには、彼はもう朝食の用意をしていた。おいしそうないい匂いを服につけて、彼はイギリスを起こしに部屋に戻ってくる。隣に腰をかけて、イギリスの頭をそっと撫でてから、体をゆっくりと揺らしてくる。起きて、と言われて、ためらいがちに体を起こすイギリスに、フランスは頬へのキスをくれる。年上ぶって(実際に彼の方が長く生きているが)子供扱いされている気もする。それでも、彼に世話を焼かれるのは嫌いではなかった。
それが、イギリスの小さい頃の、ちょっとした幸せな記憶だ。あれで、支配されているのが自分ではなくフランスだったら文句はなかった。それはそれで苦い歴史だが、今はもう、どうでもいい。フランスとのいざこざはいつまでもなくならないが、最近はまだ微笑ましいものだ。

久しぶりにフランスの家で過ごしたイギリスはその日、盛大に寝坊した。いつかのように二人で同じベッドで寝ていたが、フランスはすでにいなかった。ベッドサイドにはモーニングティー(午前の軽食)にクラッカーが置いてあった。ご丁寧にメモも書き残されていた。イギリスはベッドから出て着替えると、クラッカーを持ってキッチンに向かった。お気に入りの紅茶を淹れてクラッカーを食べた。
フランスは家にいなかった。近くにいるだろうか。昼までには戻ってくるだろうが、それまで待っているのも暇だった。あいにく、特にすることもない。ここにある書籍は、フランス語のものばかりで、正直読むのも疲れそうだった。趣味があいそうにもない。散歩かてらフランスを探すことに決めた。
探すと言っても、フランスがいそうな場所は見当がついた。畑、そこにいなかったらパリの街、セーヌ川の見える場所。
セーヌ川、だ。イギリスは気が重くなった。それでも家へと戻る気にもなれなかった。わざわざ外に出たのだから。
やがてフランスを象徴しているようなシャンソンが聴こえてきた。甘く、それでいてスケールの大きなメロディ。そのテノールの声がイギリスは嫌いではなかった。絶対に言ってやらないが、歌はうまい。
曲は聴いたことがある気もするが、なかなか曲名が思い出せない。気づいたのは、それが愛の歌だということだけだった。
気持ち良さそうに歌うフランスのまわりには、いつの間にか人が集まっていた。その中に埋もれないように気を付けながら、イギリスはフランスを見つめ続けた。彼も、寝坊助が聴いていることに気づいていた。
「おはよう。早速で悪いが、ぎゅうっと抱き締めてもらえたら、言うことないな」
何だか今日は寂しい気分でね。
嘯くフランスに、イギリスは舌打って、踵を返した。後ろから彼が駆け寄ってくることを、イギリスは知っているのだ。







タイトル ララ

不完全燃焼? また来年!
111230



 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -