透き通った夜に星を数える


厚手のコートにマフラーをして、スウェーデンはベランダにいた。寒さを和らげるつもりに飲んでいたアクアビットは、いつの間にかなくなっていた。
今日は雲がない。空気も澄んでいる。それで夜空がきれいに見えていた。
多少寒いのを我慢して、スウェーデンは女房の帰りを待っていた。転んではいないだろうか、変なやつに捕まってはいないだろうか。もしも後者のようなことがあれば、彼はまさしく鬼のように、恐ろしい報復をするだろう。今この場に女房フィンランドがいれば、スウェーデンからにじみ出た殺気に、全身を震わせただろう。
くーん、と足元に花たまごがすり寄ってきた。犬は寒くないのだろうか。ひょいとスウェーデンは花たまごを抱き上げた。くーん、と夜空に向かって鳴いた。花たまごも主人を待っているのだ。
早く、早く帰ってこないだろうか。スウェーデンは空を見上げた。きらきらと光る星がよく見えた。あの星のそばに、フィンランドが見えたら、迎えに行こうと思った。

スウェーデンが目を覚ますと、そこはソファーの上で、丁寧にブランケットがかけられていた。テーブルに手を伸ばして眼鏡をかけると、キッチンに見慣れた彼を発見した。
「おはようございます、スーさん」
ずっと待っていたフィンランドは、平然と、コーヒーを淹れているのだ。
「はい、スーさんのです。何か食べますか?」
「いや、大丈夫だ……」
「わかりました」
何事もなかったように、フィンランドはいつも通りだ。実際に、とりわけ変わったことがあったわけではない。しかし、スウェーデンにとっての大事が、いつの間にか終わっていたのだ。
ベランダのそばに、酒瓶が転がっていた。まさか、あれが原因なのか。スウェーデンの視線に気づいたフィンランドは、慌てたように話し出した。
「スーさんったら、ベランダで寝てるし、体は冷たいし、焦っちゃいましたよ」
「……わり」
「いえ、気にしてません。それに、スーさん、僕を待っていてくれたんでしょ」
一番に出迎えられるように、ベランダにいたのに、逆に助けられていては情けない気もした。そんなスウェーデンに、フィンランドは優しげな声でこう言うのだ、ありがとう、と。まじまじと言われると照れ臭くて、スウェーデンは眉根を寄せて、そっぽを向いてしまった。フィンランドは構わずに話し続ける。
「天気予報によれば、今夜も昨夜のように、きれいな夜空が見られるんですよ。今夜は二人で、外にでも出ましょうか」
リコリスでも食べながら、天体観測、ゆっくりするのも悪くない。寒くなったら、二人で温まればいいのだから。
メリークリスマス。
「……今日こそは、俺がおめを中に運んでやっがら……、みったぐね……」
フィンランドは笑っていた。




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もいもい!



 

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