お化けカボチャの灯りを頼りに


薄暗い部屋を、ぼんやりと灯りが照らしている。デザイン性のあるランタンは、フィンランドとスウェーデンが用意したものだ。本物のカボチャではないから、また来年も使えるだろう。カボチャも、ずいぶんと可愛らしいものが飾ってある。
「頑張ったんでねーの。さすがだっぺな」
「見てないで、ダンも手伝って」
いつも通り、変わらないメンバーで、ハロウィンというパーティーだ。酒を飲んで、飯を食って、賑やかに過ごす。普段は忙しくて、全員揃わないことが多い。それもあって、こういう楽しい時間が、デンマークは好きだった。
アイスランドとノルウェーが食事の準備をして、スウェーデンとフィンランドが部屋を飾り付ける。ちなみにデンマークの協力は酒代の負担だ。
ハロウィンパーティーといっても、ノルウェーにフィンランドしか仮装していない。残念だが、要は騒いで楽しめれば、それでいいのだ。
「それで、スヴェリとフィンは、いねーのけ?」
五人分のグラスを両手に持ったアイスランドは、目を外に向けた。
「買い出しだよ」

ムーミン、可愛いですよね。んだなぃ。
お馴染みのムーミンは、可愛らしいほうのムーミンで、着ぐるみ型なのが、余計に可愛い。というか、フィンランド、可愛い。スウェーデンはフードをかぶったフィンランドの頭を撫でた。高さ的にも、ちょうどいいかな、なんちゃって。
「めんげぇ……」
「ですよねぇ。僕、ムーミンが大好きです」
そういう意味でもなかったのだけれど。まぁ、恥ずかしいし、それでいいか、とスウェーデンは手をどかした。
「お兄さん、お菓子くれなきゃいたずらするぞ!」
おもちゃのランタンを片手に、真っ黒な服の男の子が駆け寄ってきた。無邪気な笑顔で手を伸ばしてきて、フィンランドはふと気づいた。お酒は持っているのに、お菓子を忘れていた。どうしようか、と思ったけれど、悩むより早く、スウェーデンがコートのポケットを探っていた。男の子に合わせてしゃがむスウェーデンは、桃色の棒つきキャンディを持っていた。
「これやっから、いたずらは勘弁、な」
「やったぁ、ありがとう!」
「ん」
喜んで走っていく男の子に、スウェーデンはしばらく手を振っていた。その様子がなんだかおかしくて、フィンランドは笑ってしまった。笑う理由がスウェーデンにはわからなくて、首をかしげた。悪い理由でもなさそうだが、気になって問うても、フィンランドはごまかすだけで、結局わからなかった。
普段よりずっと優しい顔をしていて可愛かったですよ、と言ったら、恥ずかしがってそっぽを向かれるだろうか。それとも、可愛いという表現にすねてくれるだろうか。
(ポケットにキャンディなんて、いつもは入っていませんよね)
くすくすと笑うムーミンに、スウェーデンは先ほどと同じキャンディを差し出した。
「……うめぇど?」
「僕、まだ何も言ってなかったのに。ふふ、いただきます」
見た目通りの苺味のキャンディは、甘くて美味しかった。スウェーデンが店頭でキャンディを買っている様子を想像すると何だかほほえましい。

あたりも薄暗くなり、だんだん街灯がつき始めた。あともう少し、というところで、思わぬ迎えが来た。
「スヴィー、フィン、見つけた!」
「あれ、アイス君、どうしたの」
どうしたの、じゃない、とアイスランドは走ってきて乱れた呼吸を整えながら言った。デンマークが待ちきれなくて騒いでいるという。出掛けてからだいぶ時間もたっているし、当然かもしれない。二人はゆっくりしすぎていた。疲れた、と顔で伝える彼に、フィンランドは苦笑してしまった。
「はやく、帰りましょうか」
「ん」
さっさと行こう、と背を向けたアイスランドに、アイス君、とフィンランドが呼び掛けた。振り向いた彼に、フィンランドは素早くカチューシャを着けた。猫耳だった。
「ふふ、似合ってる」
小さなお化けカボチャの箱をアイスランドに握らせた。中身は飴だ。
「な、なんなのさ、もう」
顔を赤らめてそっぽを向くアイスランドに、スウェーデンはフィンランドにしたように飴を差し出した。無表情な彼にまでそんなことをされると、アイスランドはもう、ため息しかでなかった。

ランタンの灯りに雰囲気を感じながら、ノルウェーとフィンランドがお酒を注いだ。アイスランドにはアルコールの少ない甘めのカクテルを、対照的にデンマークとスウェーデンは度数の強いものを一気に飲んでいた。いつの間にか競争が始まったのかもしれない。
「アイス、こっちさ向け」
「そのカメラをしまったらね」
カチューシャを外さないでいるあたり、本当に嫌ではないようだ。

「あらためて、乾杯!」




-------------

まとまらなくて、ごめん。こんな感じの北欧がすきです



 

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -