一緒にいたいだけですよ、他に理由がありますか

ばんっと勢いよくドアが開いて、プロイセンが飛び込んできた。
「助けて、イタリアちゃん!」
のんきにピッツァを食べていたイタリアにとって、本当に突然のことだった。日本風に言うと、晴天の霹靂だ。
プロイセンの姿を見たロマーノは、芋だァ、と叫びながら逃げていった。もはや、わけがわからない。
「オーストリアの坊っちゃんはハンガリーと仲良くお茶してるし、しようがないからヴェストのとこにいったらフランスと出掛けてるし、」
「うん、うん、わかるよぅ、プロイセン」
「やっぱり、イタリアちゃんのとこにきてよかったぜ。イタリアちゃんが一番だ」
妙に寂しがりのプロイセンはソファの上で半泣きになっていた。オーストリアやドイツに、相手をしてもらいたかったようだ。ハンガリーやフランスは友人でもあって、余計に寂しかったのだろう。そこでじっとしていられる彼でもないから、乱入して、結果、怒られた。
「イタリアちゃん、慰めてくれ!」
「うん、いいよ。ハグー!」
ソファの上なので身長差はあまり関係なかった。やっぱり、イタリアちゃんは天使だなぁ、などと思いながら、プロイセンはオーストリアもドイツもしばらく忘れることにした。つまり、イタリアでのお泊まりを実行した。結果は行間空けて、すぐ。なんちゃって。

朝早く、イタリアのドアベルを鳴らす人がいた。イタリアがはいはーい、と玄関へ走った。もしかしたら、ドイツかもしれない、と期待も込めて、ドアを開けた。しかし、イタリアの期待は、あまり叶わなかった。というのも、そこにいたのは、ハンガリーに付き添われたオーストリアだった。
「おはよう、イタちゃん。これ、差し入れのパイね。それじゃあ、私はこれで。ばいばい」
まだ屋内に足を踏み入れないうちに、ハンガリーは帰っていった。呆然として、イタリアはオーストリアを見上げた。オーストリアは顔を背けて、話を切り出せずにいた。おそらく、ハンガリーは道案内を買ってでたのだろう。プロイセンがここにいる、とわかって、オーストリアは彼を訪ねてきた。意図を察して、イタリアはオーストリアを中に招き入れた。
「イタリアちゃん、もう朝飯できるぜ、……って、坊っちゃん、何でいるんだよ」
驚くプロイセンを、オーストリアはばつが悪そうに見ていた。
「ヴェ……」
「申し訳ありませんが、イタリア、席を外せますか」
「何言ってんだ、ここはイタリアちゃんの家だろ」
「構わないよ。俺、ベッラのとこに行ってくる!」
「イタリアちゃん!」
イタリアは一目散に出ていった。思い立ったら、行動は早い。気遣いが、今は妙に気まずい。
プロイセンはキッチンの火を消して、エプロンを脱いだ。それだけで、何も言わない。
「プロイセン、帰りましょう。ドイツが待っています」
「ヴェスト、だけなのかよ」
帰りを待っているのは、ドイツだけなのか。弟が待っていてくれるのは嬉しい。しかし、目の前にいる彼にも、同じことを言ってほしい。
「坊っちゃんは、ただの、お迎え役、なのか」
帰らない、とプロイセンははっきりと言った。わがままと言うより、一種の甘えだと、オーストリアは気づいた。彼が家を飛び出したとき、オーストリアはハンガリーと一服していた。そこにプロイセンが入ってきて、つい追い出してしまい、拗ねてしまった。いつもならば弟のドイツが宥めるのに、運悪く仕事でいない。プロイセンは一晩、家出をした。プロイセンにちゃんと話さなかったことを、オーストリアは少し後悔していた。喧嘩をしたかったわけではないのだから。
「私と一緒に、帰ってくれませんか。トルテを焼いてあるのです。帰って、二人で食べましょう」
「……何か、ガキみてぇ」
食べ物で釣られているようだ、とプロイセンはオーストリアの胸を叩いた。帰りたくないはずがない、二人になりたかったのだから。

朝の市場でイタリアが見つけたのは、結局家に戻ってこなかったロマーノだった。はて、一晩、どこにいたのか。見るからに機嫌が悪くて、イタリアは理由を聞かず、話しかけずに移動しようとした。しかし、案の定、逃げようとして後ろから肩を掴まれた。
「時間帯的に、店は閉まってくる。女の子もいない。なぁ、このいらいらはどこで捨てられるんだ、ヴェネチアーノ」
おそるおそる、イタリアが振り向くと、予想に反して、ロマーノは泣いていた。呆気にとられた。まさか、怒って手を出す前に泣いているなんて。
「あいつは、ギリシャのとこに行って、そのままフランスのところだそうだ。暇じゃねーかよ、コノヤロー」
やってられないよ、とイタリアは泣きたくなった。恋人が忙しくて二人になれないのは、俺だって同じだというのに。





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確かに恋だった



 

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