さぁ、パーティーの始まりだ。


日本の家は気合いの入ったハロウィン仕様になっていた。まず玄関先の巨大カボチャを見て、中国は口をポカンと開けた。
「何あるか、これ」
「やだなぁ、中国君。どう見てもジャックオランタンじゃない。老化で視力衰えた?」
「そんなこと我だってわかってるあるよ、馬鹿にしてるあるな」
ロシア(普段着)はにこやかに花を散らしながら、中国(台湾用意の狼男)を見下ろしていた。
「我が言ってるのは、カボチャの大きさある」
中国の腰辺りまである。どうやってくり貫いたのかが、気になってしかたがない。
「本当、これだけあれば、お腹もふくれるよね」
「お前、本当は馬鹿あるな、どう見ても鑑賞用ある」
ご飯は大事だよね。

中国のツッコミはまだ重宝する。こんにちはあるー、と玄関を開けた瞬間、彼の視界に飛び込んできたのは、白い着物に長い髪を垂らした女だった。あいやー! いつもの叫び声をあげて、ロシアの後ろに隠れた。
「日本美女に叫ぶほど恐怖する狼男なんて聞いたことがないよ、中国君」
「美女なんてどこにいたあるか、説明するよろし!」
「では私が……」
「しゃべったー!!」
どうせやるなら徹底的に、が美女のモットーだ。身長からして想像もつくが、美女の正体は日本だ。西洋のお祭りに妖怪というより、ただの幽霊、ただのキャラクターが参戦してしまった。今にもテレビ画面から飛び出てきそうな。
「とりっくおあとりーと、ですよ、中国さん」
「あ、そうだったあるな。飴でもなめるよろし」
「ありがとうございます。こちらはつまらないものですが、ご笑納ください」
「受け取ってやるある」
ジャパニーズハロウィン、ここに誕生。

ところで、日本の手際のよさにはみんなが驚いた。まずアメリカがなぜか日本の家でハロウィンパーティーを企画した。最初は嫌々ながらといった日本も、いつの間にか持ち前の恭順性を発揮してしまい、衣装から装飾品まで用意してしまった。実際のところ、アメリカは何もしていない。テレビを見て、日本のマックを食べて、寝ていた。肥満大国万歳。
「トリックオアトリート!」
これ見よがしにアメリカがロシアに迫った。ぐーたらなマイ○ル・ジ○クソン(アメリカ)はス○ラーポーズで菓子をせがむ。それに対し、ロシアはごめんね、と言った。なぜか。
「今、ベラルーシがくれたアメリカ君用のハロウィングッズしか持ってないんだ」
そう言って取り出したのは、ナイフだった。
「HAHAHA! しようがないな、代わりに中国にいたずらするぞ!」
このナイフ、もちろんおもちゃである。なぜか姉から渡された。護身用に、だそうだ。ベラルーシから渡されたのは、いつも通りの愛だけだ。
ロシアの代わりに中国へと駆け寄ったアメリカは、案の定、やり返されていた。これが現代社会だ。
「さて、皆さん、そろそろお腹も空きませんか?」
いいところに、日本がお盆を持って呼びにきた。何事も、腹が減ってはうまくいかない。和洋折衷の食事で、四人は深夜まで続く小さなパーティーを始めましたとさ。




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メランコリーは逃げ出した



 

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