屋上の愛妻弁当

パロディ


アーサーのランチボックスなんて、怪しすぎて見たくないよ。堂々と言ってみせたアルフレッドは、さっさとベンチに座り、多めの昼食を広げた。残念ながら、彼の食事にツッコミをいれる菊は、今ここにいない。百歩譲ってアイスはいい、デザートだ。何だ、そのハンバーガーLLサイズは。ここは学校だろう。
そんなところで、アーサーの昼食はというと、見事なお弁当だった。色とりどりでバランスの良い、しかもタコさんウインナー入りの、理想的なお弁当だ。それを見たアルフレッドが、目を見開いて驚いた。
「君、なんだい、それ!」
「うるさいぞ、そしてきたない、とばすな」
アーサー自身、その弁当には満足げだ。もちろん、これは、アーサーが用意したわけではない。
「わかったぞ、フランシスだろう!」
正解だ。
どうだ、羨ましいか、と自慢する気はない。しかし見せびらかしたい気持ちがないわけではない。アーサーは気づいていない。世間一般的に、それを自慢というのだ。中身はともかくとして、料理にはかなり評価されているフランシスだ。その料理を食べたがるやつも少なくない。
それでアーサーは屋上の鍵を開けて、静かに弁当を食べる。たまにアルフレッドや菊もいるが、それは数少ない友人だからいいとする。

フランシスと言えば、教室でアントーニョ、ギルベルトと昼食を食べていた。サンドイッチを食べながら、アントーニョがフランシスの昼食に注目した。
「あれ、フランシス、今日は購買パンやん、めずらしい」
「パンくず、こぼしてるよ、ほらふきなさい」
「フラン、なんか母ちゃんみてぇ」
「こんな世話のかかる息子いらないよ」
「嘘つけ、意外と世話好きだろ、お前」
茶々をいれるギルベルトもまた、パンくずをこぼしていた。最悪なのは、口の回りにメイプルシロップをつけていることだ。どういう食べ方をしているのだ、お前は。普段はもっと紳士的な癖に。フランシスはウェットティッシュを取りだして、不格好なメイプルをぬぐってやっていた。母ちゃん決定。
「弁当は作らなかったん?」
「ちょっと寝坊しちゃって、時間がなくてね」
「そういえば、遅刻してたもんなー」
そうそう、とフランシスは笑っていた。寝坊した上で、アーサーの弁当はいつも通りにつくってみせた。遅刻も頷ける話だった。無論、アントーニョもギルベルトも、アーサーの弁当のことは知らない。




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空想アリア

どや。



 

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