休日

休日っていうのは、体を休めるためにある日だと思うんですよね。なのに、関索ったら、朝からずっと走り込みしてるの。昨日まで毎日部活終了してからも自主トレしてて、暇がないんですよ。あたしも頑張ってついていこうとしましたけど、さすがに、もう無理です。
あたしたち、高校生ですよ! 青春真っ最中のはず。部活も大事だけど、もちろん恋愛だって若者の醍醐味でしょ。なのに関索ったら、練習熱心過ぎて構ってくれないんです! あたしは、関索の隣にいたいのに、気づいてくれないんです。馬鹿みたいに正直で、さわやかに情熱的で、それは関索のいいところだし、あたしも大好きだから何も言えなくなっちゃうし……。
「どう思いますか、関索のお兄さん!」
どう、と言われても、困ったものだ。関平はたじろぎ、視線だけで向かいの星彩に助けを求めた。しかしクールな彼女にも難しいらしい。無視を決め込まれた。そんな先輩二人の微妙なやり取りに、恋する乙女は気づかない。
いつの間にか三人が集まった関平関索兄弟の家で、鮑三娘は涙目になりそうだった。関索に対して不満はある。けれど何も言えなくなってしまう。それが関索だから、努力の邪魔をしたくない。
「あ、これってもしかして、惚れた弱味ってヤツですか?」
「う、え、あぁ……」
惚れたら負け、とはよく聞く言葉だ。関平は星彩に再度視線を送った。相変わらず、無視だ。黙々と雑誌を読んでいる。あぁ、たしかに鮑三娘の言う通りかもしれない。
「星彩先輩、何を読んでるんですかぁ? って、わぁ、なんだか意外かもー!」
「あ、待って三娘!」
珍しく星彩が慌てた。にやにやと笑い始めた鮑三娘に対し、星彩は顔を赤らめていた。気になるではないか。雑誌を覗こうと試みたら、タイミングよく父が現れた。
「そろそろ喉が渇こう」
賑やかな談笑を、父は聞いていたらしい。嫌味を感じさせない父親ぶりはさすがで、たぶん三義兄弟で一番父性が強いと思われる。ソファに腰かける三人へ、飲み物を用意してくれた。冷たい麦茶のコップが三つ、テーブルに置かれた。氷入り、さすがは父上。
「わっ、やさしーですね、お義父様!」
「いただきます」
「父上、ありがとうございます」
会話も一旦休憩だ。麦茶を一気に飲み干して、関平は時計を見た。そろそろ弟が戻ってくる頃だ。関索が帰ってきたら、また鮑三娘は一段と元気になるのか。ぼんやりて考えながら、うちわに手を伸ばした。
「……休日だものね」
カラン、と飲みかけのコップの中で氷が音をたてた。星彩のだ。
「みんなで買い物にでも行かない?」
ショップで新作を買って、アイスを食って、カラオケに行って、高校生は忙しかった。




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色々30題其の29
楽譜。

あら、関索いないじゃん



 

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