憂鬱をまたぐ星々のひとつひとつを


ふたご座流星群、今夜が一番の見頃です。
テレビ画面の向こうでキャスターが言った。なかなか可愛い笑顔だ。大喬のほうがずっと可愛いけれど。朝一の情報番組では、適任の女性なのだろう。
頭の中で鶏が泣いた。こけこっこー。当たり前だが、届く範囲に鶏は生息していない。
「どうした、孫策。箸の進みが悪いぞ」
なぜかエプロン姿がよく似合う周瑜、孫策と向かい合う形で食卓についた。男二人の食卓でもむさ苦しさを感じない。きっと周瑜のおかげかと思う。同じ性別の孫策から見ても、彼は美人だった。男なのに。
「流星群だってさ。俺、今知ったんだよな」
「君は少し、情報に強くなるべきじゃないか」
「何をー、」
「現在の与党は」
「自民党だろ」
「民主党だぞ」
「…………」
完敗。この分野で孫策が周瑜に勝つのは難しそうだ。口ごもって、孫策は周瑜の作ったハムエッグを食べた。おいしい。美周朗は味にもうるさかったか。
自分は一人じゃ生活できないことを感じた。無念。

「それで、流星群が見たいのか」
食後、色の濃いコーヒーを飲みながら、周瑜から尋ねてきた。それに孫策は曖昧に答えた。ちなみに彼はホットミルクだ。いかにも苦そうなブラックよりは、こっちのほうが好き。まだまだ成長期のカルシウム接種、なんちゃって。
「見たくないのか」
「そういうわけじゃあないけどさ」
「迷ったときは、思いきって決行すべきじゃないか。君なら、そうだ」
「そうか……、そうだよな!」
孫策は二喬や弟妹も誘ったが、それぞれの理由で断られてしまった。夜は眠る時間だとか、仕事があるだとか、違う方と見るだとか。結局、周瑜と二人だった。なんだか、気恥ずかしいかもしれない。やめればよかったかな。

流れ星と言えば、願い事だよね。
「大喬がずっと悲しまないように、権や尚香が笑ってますように、太史慈がちょっと優しくなりますように、それから……」
「ずいぶんと多いな。君らしくて構わないが」
横でクスクス笑う周瑜に、ちょっとだけムッとした。腹が立ったとか、そういう理由ではない。
「周瑜は、なんか願い事ねーの?」
「たぶん、君以上にあるよ」
「ふーん」
「しかし、私は私の力で、叶えてみたいのだ」
「それは俺も同じだけどよ」

「……孫策の願い事が叶いますように」
「なんだそれ」
「君の願い事には、無茶なものも多いかと思ってね。少しでも効力が上がるように」
流星群がきらりと降っている。丁寧にひとつひとつを目で追った。思ったよりも早く消えてしまう。三回も唱えるのは相当難しい。
周瑜の願いも叶えてやってくれよな。声に出さずに、そっと祈った。
周瑜がちらりとこっちを見た気がした。気のせいだと信じて、孫策はマフラーに顔を埋めた。




------------

透徹




 

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -