甘いお菓子みたい

(幸村←)くのいち+リア充甲斐姫




「なに、香水変えたの?」
朝一番で、甲斐の親友は聞いてきた。ついでにやたらと顔を、いや鼻を近づけてきて匂いを嗅いできた。くんくん、とまるで犬だ。猫というより、犬なのだ。見た目は猫だけれども。甲斐は甘いため息を吐いていた。逆に親友はげんなりした。
「お姫様ったら、色気付いちゃったって」
「失礼ね。私だって、おしゃれな高校生なのよ。それに、ちょっと……」
口ごもる甲斐の幸せそうな、切なそうな顔を、親友は見逃さなかった。まるで、本当に恋をしているようだ。好きな人が、できたようだ。もしかして、などと推測するのはやめた。
甲斐も、近い未来には、その恋人と二人で過ごすようになるのかな。小柄な少女は、しっかり気落ちしていた。嬉しいような、寂しいような。

放課後、彼女は甲斐を置いて、一人で武道場へと足を伸ばした。近くで見ているだけではあるが、彼女には十分だった。視界の中心で幸村が竹刀を握り稽古に励んでいる。ときおり、目が合う。少しだけ照れ笑いして、手を振る。練習の邪魔にならないように、片隅に座る。
幸村のことが好きだ。ただ、幸村は彼女のことを信頼たる後輩くらいにしかのだ。彼女もそれを知っているから、余計に足を踏み入れようとはしない。そのぶん、彼女にとってあの姫様は大切な存在なのかもしれない。心の隙間を埋めてくれるような、そんな大事な友人。
休憩時間には、珍しく幸村から話しかけられた。
「そなた、元気がないようだが」
「そんなことないですよ。あたしはいつも明るくかわいく元気です」
作り笑いは得意だ。今は少し、それを恨んだ。
「今日は甲斐殿はいないのだな」
「怪力姫は、今ごろ、るんるん気分で下校中じゃなあですか」
とげを含んだような言い方には、さすがの幸村も気づいたようで、とう答えようかと苦笑してしまった。
妬いているのよ、あの子が離れていってしまいそうだから。

急に、どうしてしまったのか。いや、なんとなく理由はわかるけれども。甲斐は下駄箱からローファーを取り出して、少々粗雑に足元へと投げた。
それでも、甲斐の顔は自然と微笑んでいた。「香水変えたな」なんて、言われた相手が違えば、嬉しさも変わるものなのか。あの子には悪いから、口には出さない。
ただ、甲斐にも言いたいことがあるのだ。
(そんな不安、無駄でしょって)
実に甘い。




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色々30題其の12
楽譜。

まとまりません。
甲斐姫の香水は、彼氏からのプレゼントという設定だったの…



 

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