花と復讐は盤上に踊る

若干6寄り、死ねた




もし俺が討たれたら、お前は仇をとってくれるのか?
前触れもなくそんなことを呟かれ、凌統は空気が凍るような気がした。答えられなかった。膝を抱えらように、座り込んだ。その肩を当の甘寧が軽く叩いて、悪い、と一言残して立ち去った。
その後日、戦が始まった。凌統を残して、甘寧は出陣した。

よく考えてみよ。凌統にとって甘寧は親の仇だ。しかし仇討ちを実行することもなく、だらだらとゆるい関係が続いている。たしかに、今となっては、甘寧は常に隣にいるような相棒だ。助けているし、助けられている。憎く思わなかったわけはない。仇を討とうと武器を向けたこともあった。ただ、なぜか、いつの間にやらずいぶんと親しくなってしまった。
軍人なのだから、戦場に行く。凌統も甘寧も、いつかそこで死ぬかもしれない。それを改めて思い出してしまった。どちらが先に死ぬかまではわからないけれど。
「悩み事ですか、凌統殿」
「陸遜?」
「浮かない顔をしていますね」
竹簡を抱えた若き軍師は、凌統の傍らに腰を下ろした。小さな花が咲く地べたは若干湿っていて赤い衣を汚した。
「悩み、というより、不安、みたいな、さぁ」
歯切れの悪い凌統は、珍しい。まだ幼さの残る顔をした陸遜は、目をぱちくりさせて凌統を見ていた。
「不安、というのは、」
陸遜がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「何かしら不明瞭なことがあって、それに対して恐れを感じている」
要するに、はっきりさせられたら、不安は自然と晴れるものだ、と陸遜は言う。それをはっきりさせられないから困ってしまったのだ、と返す。陸遜が直球に、甘寧殿のことかと問えば、凌統の肩がはねた。
「惚け話、ではなさそうですね」
「変なことを言うなっつの」
「えぇ、すみません。凌統殿のお役に立ちたかったのですが……」
この類いの相談は、練師あたりが妥当だ。頷ける話だが、実際に相談をしには行きたくない。
「……どういったことで、迷ってしまわれたのですか」
少しでも力になろうと聞いてきてくれる陸遜だが、どうも話す気にはなれなかった。

重い、重いのです、父上。
凌統はひとり、城で体を動かしていた。いつの間にか両節棍も放り出して、木陰で鍛練をしていた。
集中して集中して、来る戦に備えて、殿を、呉の家族を守れるように。ずきん、と凌統の体は崩れ落ちた。
「凌統将軍、どうなされましたか?」
通りすがりの一兵卒が駆け寄ってくる。大丈夫だ、何でもない、頭を押さえて凌統は無理矢理立ち上がる。不安そうに見つめてくる兵卒の視線、そこにさらなる衝撃が転がり落ちる。
「凌統殿!」
息を乱して走ってきた陸遜が、苦しそうな顔で、悲痛な事実を伝えた。

もしもの時は、存外はやく訪れてくれるものだ。
小さいなかに咲き誇る花を、凌統は気にも止めずに踏み潰した。
申し訳ありません、父上。俺は、俺がやりたいように、やってみようと思います。
戦場の慣れたようでなかなか慣れないこの臭いに、うんざりした。向かってくる兵に凌統は両節棍を見舞った。
「甘寧の仇だ……!」
覚悟しとけっつーの。凌統は敵陣へ飛び出した。




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空想アリア

ただの走り書き
無理に6に絡めようとすると、こうなる



 

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