朝に夢来たりて



朝に目が覚めて寝台から起き上がる。ぽつぽつと雨音が聞こえて、少々うんざりとした。ここ最近は雨ばかり降っている。陰鬱な雰囲気には耐性があるものの、さすがに気が滅入る。まだはっきりとしない意識のまま、司馬懿は素早く髪を結い上げた。
姿が見えるようで見えないそれは甲斐甲斐しく話しかけてくるようだった。
「今日は、下ろしておかないのですか」
湿気で広がる髪がうっとうしいのだ。適当に相手をしながら、楽に着付ける。
竹簡を広げてそれに目を通し始めると、少しおとなしくなった。それでも、やつはいる。
「休憩も大事ですよ、ほら……」
「邪魔をするな」
「邪魔をしているつもりはありませんが……」
困ったような声が聞こえてくるようだった。だからどうするわけでもない。構わず何でもない仕事を続けた。
「仕方がないようで……、お茶を淹れてきましょう」
気配が消えた。余計なお世話だ、と司馬懿はぼやいた。ふと手を止めて、首だけ動かして背後を見た。靄のかかったような、ぼんやりとした影が見えた気がした。

ぽつぽつという雨音が聞こえるなか、司馬懿は目が覚めた。
寝ぼけ眼を擦りながら、髪をくくり、着替えをした。
机上に竹簡を広げて、そわそわした気分で目を通し始めた。落ち着かない。集中力はてんでない。
「父上、お茶がいれっぱなしになってましたよ」
冷めちゃいますから、飲んでしまってください。差し出されたお茶はまだ温かい。はて、なんだったか。香りを感じながら、司馬懿は記憶をたどった。



--------------

Guilty

ホラーちっく……とはいかなかったようだ



 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -