姜維の仲立ち日和

肉まんでも与えておけば、飼えるのではなかろうか。そんな馬鹿なことを考えながら、姜維は趙雲と一服していた。
「ところで、馬超殿はどうなされたのですか」
姜維が何気無しに言うと、趙雲が小さく反応した。それでも彼は平静を保って湯を流し込んでいた。
幕舎の外で見たのは、頬を赤くして突っ立っていた馬超だった。気分をよくして紅潮したとか、そういうのではなく、腫れていた。見かねた姜維が「趙雲殿と何かありましたか」と問えば、図星だったらしく、馬に飛び乗っては逃げていった。追い付けるはずもないし、追い付いたとしても馬上攻撃を食らって投げ出されるに違いない。それはごめん被りたい。
「姜維は、馬超殿がどこにいるのか、知っているな」
「残念ながら。騎乗した馬超殿には敵いませんからね」
「そうか……」
重いため息をついて、趙雲は右手を見つめていた。おそらく、馬超のあの頬は、趙雲の拳のあとだ。
「思わず殴ってしまうようなことがあったのですか」
「……別に、そういうわけではないのだが、」
ごにょごにょと呟く声は小さくて、姜維には聞こえなかった。
「その、なんだ、恥ずかしいのだ」
「まさか、痴話喧嘩ですか?」
「ち、ちわっ……!」
痴話喧嘩なり。顔を赤くしてふるふると肩を震わせる趙雲は、姜維から見ても可愛らしい。まさか、蜀軍に入った頃は、長坂の英雄がこういう青年だったとは思わなかった。
仲が良いようで、見ていて姜維も楽しかった。楽しんでいた。
「私が馬超殿を呼んできます」
「姜維!」
「お任せください。趙雲殿は何を言うか考えていてくださいね!」
馬に飛び乗り、姜維は馬超を探した。何やらいい気分だったが、まだ彼は気づいていなかった。政略のことで、諸葛亮が彼を待っていた。



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諸葛亮のお仕置きおち



 

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