遺言
---------------------
死ねた、3要素あり
毛利元就は死んだのだ。風の噂に聞いた。拍子抜けだった。何より、終止符を打たせたのが、自分ではない誰かで、それに苛立った。つまらない。何も知らずに鳥が羽ばたいた。 「なんだ、その腑抜けた顔は」 雑賀庄まで足を運んだ元親を、孫市はからすと罵った。当の本人は気づいていない。 「サヤカに聞きたいことがあってよ」 「おい、元親」 「毛利について、だ」 言うと思った。孫市の苦虫を噛んだような顔は、なかなか見られない。毛利元就は死んだのだ。もういない。孫市は、たとえ相手が誰であれ、死人に興味は抱かない。しかし、元親は違った。 「アイツ、最期になんて言ったんだ」 「狂い始めたか」 「ん?」 「からすめ」
「前を向け、振り返るな」 もう忘れてしまえ。毛利のことは忘れてしまえばいい。堕ちる前に、捨てろ。 忘れられたくない。誰かがそう言った。
-------------
Circulation.
|