遺言
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死ねた、3要素あり




毛利元就は死んだのだ。風の噂に聞いた。拍子抜けだった。何より、終止符を打たせたのが、自分ではない誰かで、それに苛立った。つまらない。何も知らずに鳥が羽ばたいた。
「なんだ、その腑抜けた顔は」
雑賀庄まで足を運んだ元親を、孫市はからすと罵った。当の本人は気づいていない。
「サヤカに聞きたいことがあってよ」
「おい、元親」
「毛利について、だ」
言うと思った。孫市の苦虫を噛んだような顔は、なかなか見られない。毛利元就は死んだのだ。もういない。孫市は、たとえ相手が誰であれ、死人に興味は抱かない。しかし、元親は違った。
「アイツ、最期になんて言ったんだ」
「狂い始めたか」
「ん?」
「からすめ」

「前を向け、振り返るな」
もう忘れてしまえ。毛利のことは忘れてしまえばいい。堕ちる前に、捨てろ。
忘れられたくない。誰かがそう言った。




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