冥界の門
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――いつまでそこにいるつもりだ
あの方がここに来られるまででござる。
――いい加減、渡ってもらわないと、俺が困るのだがな
申し訳ござらん。しかし、某は今、一文足らぬゆえ、渡ることは叶いませぬ。
――嘘を吐け
嘘など吐いておりませぬ。信じてくだされ。
――あいにく、俺が信じるのは、俺だけなんだ
それはそれは、貴殿もおもしろい御仁ですな。
――おだてても何も出さないぞ
存じております。
――まったく、近頃の人間は厄介だ。お前のような輩は、とくに厄介だ
某は貶されているのか、誉められているのか。
――半々だ
貴殿にしては珍しい答えでござるな。
――まぁな ――ところでお前は、いつまでここにいようとしているのだ
だから、ずっと言っているではありませぬか。 天翔るあの方が、ここにたどり着くまででござる。
――それは無理な話だな
えぇ、到底、無理な話に違いありませぬ。
――可哀想なやつ
それでも、某はこれで、満足でござる。幸せは十分いただけた。
――本当に、あわれなやつだ
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余計な描写は、必要なし
Circulation.
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