冥界の門
---------------------


――いつまでそこにいるつもりだ

あの方がここに来られるまででござる。

――いい加減、渡ってもらわないと、俺が困るのだがな

申し訳ござらん。しかし、某は今、一文足らぬゆえ、渡ることは叶いませぬ。

――嘘を吐け

嘘など吐いておりませぬ。信じてくだされ。

――あいにく、俺が信じるのは、俺だけなんだ

それはそれは、貴殿もおもしろい御仁ですな。

――おだてても何も出さないぞ

存じております。

――まったく、近頃の人間は厄介だ。お前のような輩は、とくに厄介だ

某は貶されているのか、誉められているのか。

――半々だ

貴殿にしては珍しい答えでござるな。

――まぁな
――ところでお前は、いつまでここにいようとしているのだ

だから、ずっと言っているではありませぬか。
天翔るあの方が、ここにたどり着くまででござる。

――それは無理な話だな

えぇ、到底、無理な話に違いありませぬ。

――可哀想なやつ

それでも、某はこれで、満足でござる。幸せは十分いただけた。

――本当に、あわれなやつだ




------------

余計な描写は、必要なし






Circulation.
- ナノ -