誘い
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宴会の席で、あろうことか、殿はほんの一杯で酔い潰れてしまっていた。そうだ、酒に弱いんだったね、この人。失念していた(あるいは、わざと)。
騒ぐ正則さんや、静かに睨む清正さんを無視して、殿をおぶった。仕方ないでしょ、この泥酔加減を見れば!
とりあえず、奥座敷にでも連れていって、休ませることにしましょうか。
「さこん、」
肩口で、舌足らずに俺の名を呼ぶのが聞こえた。気持ち悪い、と言うわりに、その顔は険しくない。いつもより、ずっと素直な殿がいた。
――豊臣が、勝ったのだ
そんなに嬉しかったんですか。殿は珍しく、柔らかい笑みを溢した。それには面を食らってしまった。明日は雷かな、くわばらくわばら、なんてね。
「俺はもっと飲みたかったんですからね、勘弁してくださいよ、殿」
もちろん、殿には聞こえていないのだろう。睡魔に負けた殿は、すやすやと寝ていた。まったく、こちらは何も言えませんよ!
奥では、殿の母代わりでもあるおねね様が、布団を敷いて待っておられた。いやはや、準備のいいことだ。
「たまにはね、こう、ゆっくり休ませなきゃ駄目なんだよ」
その通りだ。俺が布団に寝かし付けると、殿は翌の昼まで起きなかった。まぁ、せっかく眠りに誘われたわけですからね、ゆっくりしててくださいよ、殿。





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一、左近の口調
二、左近の豊軍の呼び方







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