塗り込めた感情
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路地裏、というシチュエーションって、なかなかそそる。まさか自分がこうなるとは思ってなかったけれども。銀時の前には、おまわりさん、土方がいる。逃がさない、と言わんばかり、腕でがっちりロックされた状態だ。さて、どうしたものか。ヘビースモーカーの彼にしては珍しく、煙草をくわえていない。それでも様になっていて、さすがのルックスだ、ちょいと憎たらしい。
「田串君さ、暑さに頭やられた?」
「土方だ。そして至って普通だ」「ふーん」
では、この状況はどう説明できるというのか。表情ひとつ変えず、いつも通り死んだ魚の目をしている。そんな銀時が、少々気になったらしい。
「意外と冷静なんだな」
「……ん」
胸部に手を当てれば、感じるのは相手の鼓動。銀時のそれは、いつもよりずっと速い。冷静でも、余裕でも、慣れているわけでもない。土方は意味ありげに笑う。その笑いが気にくわなくて、銀時は空いている手で土方の頬をつねる。簡単にとられて、指先をなめられた。ここでようやく、銀時が顔を変えた。
「てめぇなんざ、嫌いだ。土方のばかやろー」
「そりゃ、どうも」
もう、どうにでもなりやがれ。





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銀魂好きだ。単行本全然持っていないけれど。







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