西の空
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陽が沈んでいく。空は橙色で、青色で、白くて、紫色だ。それを見て風情を感じるわけでもなんでもない。ただ目に映っただけだった。
「らしくない顔だな」
アイツには鼻で笑われた。しかし気にも止めなかった。逆に申し訳なく思ったが、だからといって、ごめん、とは言えない。これだから衝突するのだ。わかってはいるのに。
「こんなところにいられても、邪魔だ」
早く屋敷に帰れ、と言いたいのか、いつまでも気に病むな、と言いたいのか。まぁ、どちらでもいい。もう少し、ここにいさせてくれ。
「勝手にしろ」
いい迷惑だ、と隠しもせずに言われた。言葉とは裏腹に、アイツは俺の隣に腰を下ろした。背を、軽く叩かれた。慰められているのか。気づいた途端、思わず涙腺が緩んだ。ひたすらうつ向いて、顔を隠した。恥ずかしい。
「俺は腹が減っている。さっさと立ち上がってほしいのだがな」
ならば俺を放って、さっさと帰ればいいものを。相変わらず、素直じゃない。その性格は、おそらく、一生直らないのだろうな。それでも、今だけはその不器用な優しさに、感謝していた。




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