憧れた空
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私は、いつ、外へ出られるのでしょうね
とくにこれといった感情もなしに、たま――ガラシャが呟いた。その声は、虚しく部屋に響いた。自分が幽閉状態であることは明らかだった。
ガラシャは洗礼を受けた身である。その名前は、神の恵み、という意味がある。はたして、今、この状態に、神の恩恵があるのかどうかは、不明であるが。生きていることが恵みなのだと、ガラシャは考えることにした。生きるためには、ここにいるのが一番の得策だ。夫である細川忠興は、虐めたくてガラシャを閉じ込めているわけではない。ガラシャの父は、謀反を起こした明智光秀である。さらなる戦乱も続いている。彼女を外へ出すのは、危険なのだ。考えすぎかもしれない、いや、そんなことはない。用心に越したことはない。
屋敷の廊下に出た。向こうに、青い空が見えた。ガラシャはおもむろにロザリオを取りだし、指を組み、神へと祈りを捧げた。
神の加護は、世の皆にありますように
そうすれば、皆、幸せになれるかもしれない。世も平和が訪れる。ガラシャ自身も、堂々と、青空の下に立てるかもしれないではない。しかし、もう時間もないのだ。戦禍の火種は、すぐそこに迫っていた――





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一度は書きたい、細川夫婦のお話でした。






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