決着の時
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「お館様の上洛がため、貴殿はここで、某が止める!」 馬から飛び降りてニ槍を構える好敵手に、政宗はにやりと笑う。やっぱり、こうでなくっちゃ。政宗が刀を抜く。もちろん、六の刀を。最初から、本気である。 「右目の旦那」 「猿飛か」 「いやぁ、毎度、うちの旦那がごめんねー」 頓狂な声色でおしゃべりをする佐助だが、彼が小十郎に向けているのは、いわゆる、殺気、である。本気、である。口元は笑っていても、目は笑っていない。 「俺の旦那が頑張ってるからさ、俺も、いっちょ、やるしかなくてさ」 「台詞のわりに、楽しんでるみたいだな」 「まぁね。たまには、こういうのもいいかと思ってね」 佐助の、武器の刃が、きらり、と光った。あぁ、やるしかないみたいだな。小十郎も抜刀する。その瞬間から、佐助の猛攻が始まった。 (こいつ、こんな実力者だったのか) 佐助は幸村や小十郎とは違う。侍ではない、武士ではない、忍びである。思えば、佐助と本気で武を交えるのは、初めてかもしれない。彼は常に、裏方として、静かに、かつ密やかに、暗躍していたのだから。 「いや、」 佐助のこれは、ただの武ではないのだろう。太陽が隠れ、影が視界に入る。その影は―― 「忍び、なんだな、お前は」 佐助の目は、冷たくて、暗かった、そして綺麗だった。
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