色褪せた写真は捨てたよ 後日、それはよく晴れた日だった。政宗は食堂の前で佐助と幸村を見かけた。話しかけようと思ったが、それはかなわなかった。仲良く笑い、肩を並べて歩く二人には、どうも近寄れなかった。幸村が、そして佐助が、幸せそうだった。 政宗はキャンパスの奥、小さな菜園へと走った。 「俺ね、昔の旦那のことが、好きだったんだ」 その深意はわからずとも、感覚が、何かを理解していた。幸村は黙って、佐助の本音に、耳を傾けた。 「あの旦那が好きだった。でもさ、俺が大好きだったあの旦那はもういなくて、今の旦那が受け入れがたかったのかな」 忍びの従者にとって、護っていた主人に先立たれるのは辛かった。情けないとは思わなかった、ただ悔しかった。しかし、本当は、護られていたのかもしれなかった。忍びが主人を護る前に、主人が忍びを護ったのだ。 「あのときの俺は、あの旦那が好きだった。今の俺は、あのときの俺じゃあないんだよね、きっと。同じだけどさ、別なんだ。俺は、旦那が好きだ」 「無理は、しなくていいぞ、佐助」 「無理なんかしてないよ」 「俺にとって、佐助は佐助だ。それ以外ではない。俺は、佐助が好きだ」 口を開いた幸村が言ったのは、普段よりも、ずっと重みがあったていう。どういう意味だろうか。難しいことは、あまり考えたくない。だから黙れ、と幸村が言った。 互いに、黙る。沈黙は怖くなかった。 新しい幸の色で、満ちていた。どんよりとしたセピア色が、音もたてずに剥がれ落ちた。 -------------- おつかれさまっした |