幸せサーチャー




三成は大谷吉継の病室にやって来ていた。花瓶の花だけを変えて帰ろうと思っていた。
「ぬしがここに来るのも、久しぶりよな」
大谷のほうから話しかけられて、三成は少々面食らった。素直に、嬉しいものだ。
「そんなことはない」
「それでも、回数は減ったぞ」
「……そうか」
「…………」
満更でもないと、本人は気づいていないが、ずっとやわらかい顔をしていた。

「三成、今度こそ、言わせてくれ」
「好きだ」
「あぁ、好きだ。……三成?」
「私と、恋でも愛でもさせてやる」
「…………」
「諾以外は許さない」
「あ、ありがとうございます……!」
家康としては、三成から言われるとは予想外だった。

慣れた手つきで花を取り替える三成の背中を、大谷はじっと見ていた。そのうるさいくらいの視線に気づいて、三成はどうした、と後ろ向きに言った。
「いや、な、妙なこともあるものよ」
「何の話だ」
疑問を投げ掛ければ、大谷からはおかしな笑い声が溢れていた。ますます意味がわからない。
「なに、気にすることはない。ただな、めでたきことよと思うたに過ぎぬでな」
「だから、何の話だと聞いているのだ、刑部」
「怖い怖い。我はただ徳川からいろいろと話を聞いただけのこと」
三成の顔色が変わった。その変化が大谷にはおもしろくて仕方がなかった。はて、なぜだろうな。
「徳川がいい顔をするのは、ちと気に入らぬが、」
まぁ、主がいいなら、それでよかろう。この日の大谷は、いつになく機嫌が穏やかだった。きっとそうに違いない。
帰ったら家康に一言、いや百言くらい文句を行ってこよう。逆に三成は不機嫌だ。
いや、痴話喧嘩のようなものかもしれない。

「お帰り、三成」
「家康、貴様、跪け、頭を差し出せ」
「いきなり過ぎるだろうっ」
竹刀を持ち出しそうな勢いの三成は、まるで容赦がない。それは器用に避けながら、家康は最近の行動を振り返った。何かしちゃったかな、と。けれども思い当たらない。

ちょっぴり危なっかしい毎日だけれど、それでも幸せだなと思えるようになりました。




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終わり




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