忘れてない?




抗議が終わって教室から出たところを、両脇から二人の悪友に捕まった。ガシッと掴まれていて、逃げ出すことは困難そうだ。元親も慶次もいい笑顔だったし。とりあえず、
「よぉ、家康」
「ちょっと質問があるんだけど」
この屋上に呼び出される女子高生的なノリは何だろう。
連れてこられた先は食堂の二階で、半兵衛がコーヒーを飲みながら三人を待っていた。家康は無理矢理椅子に座らされて、半兵衛からはオレンジジュースが差し出された。
「飲みたまえ、家康君」
できればホットがよかったです、とかわがままは言えない。間が保てないので、遠慮がちにジュースを飲んだ。甘い。
「早速だけど、」
「いつから三成と付き合ってるんだい」
親友の俺らには教えてくれてもよかったんじゃねーか。三人は至って真面目に話を切り出してきたのだが、家康は首をかしげていた。その頬は若干赤い。
「いや、その、」
「その?」
「ワシと三成は、まだ付き合ってない、ぞ」
「…………」
家康の告白に、三人は黙った。一番衝撃を受けたのは、おそらく半兵衛だ。
「だって、お泊まり……」
「したさ。でも、まだ、付き合ってるわけじゃなくて、」
「コクれ!」
「そうだ、コクれ!」
「君たちは黙ってくれ!」
乱戦状態だ、それこそ関ヶ原の戦い乱入ステージ並みに。困った困った、と当の本人は呑気に頭をかいていた。しかし、もう一歩先に出なければいけないのは、その通りだ。家康も考えていないわけではない。
「コクれ!」
「……やってやろう」
「家康君!?」
ワシ、徳川家康、今度こそ、石田三成に良い返事をもらってみせるぞ!
高らかに宣言する家康を、慶次と元親がさらに囃し立てる。一方で、半兵衛は目眩がする気分だった。別に二人が結ばれることが嫌なのではない。まして反対などしていない。ただ心配なのだ。三成も、家康も。こんなその場の勢いのようなものには批判的だ。
「今なら、三成とぶつかれる気がする」
これはもう本人たちの問題だ。すでに半兵衛が心配する余地はないのかもしれない。半兵衛は健闘を祈った。



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会話多すぎ……




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