これ以上何も要らない 珍しく三成のほうから家康に歩み寄ってきた。そんな彼は手にアップルパイを持っていた。それが何か、家康はよく知っている。購買部の焼きたてパンだ。あそこのパンは、うまい。 「知っているか、家康、今日はハロウィンだ」 「あぁ、よく知っているぞ。ワシもお菓子なぞ持ってきた」 「菓子はいらない」 家康は飴やチョコレートの包みを見せびらかしたが、三成はそれをあっさりと拒否した。何がしたいのだ。それ以上彼は何も言わない。しかし、離れていくこともしない。 「おい、今日はハロウィンだと言ったはずだ」 「あ、トリック・オア・トリート」 待っていたと言わんばかりの早さで、三成は家康の手をとった。不覚にもどきりとして、家康は緊張してしまった。丁寧に手渡されたのは、例のアップルパイだった。 「それだけだ」 自慢の駿足で立ち去っていく三成を追うことはできなかった。家康はアップルパイを片手に、呆然と立ち尽くしたままだ。 「元親、あれは脈有りだと思わないか」 「あの凶王がなぁ」 すぐ後ろで、悪友二人が笑う。それにさえ、家康は気づかない。 (三成からプレゼントもらってしまった……っ) テンションは急上昇する。今は至高のプレゼントだ。 ------------- 妄葬 家三ふぃーばー! ← |