act the fool



後ろから羽交い締めにされたかと思えば、急に視界を隠された。ほんの少しの恐怖が、脳裏を過る。彼が、怖いと、思ってしまいそうだった。どうしても、身が強ばってしまう。戦場とはまた違った空気だった。
「政宗殿、」
どうなされた、政宗殿。返答はない。しかたなく、もうしばらくそのままだった。
「なぁ、真田幸村」
「はい」
「これ、もらっていいか」
しゅるりと赤い鉢巻きがひもとかれた。これとは、つまり、この鉢巻きのことだった。政宗の手に捕まれた鉢巻きは、ひらひらと風に流れていた。それを、幸村はただ眺めているだけだった。

空は政宗が好みそうな、透き通った青い色をしていた。庭先に寝転がり、何をするでもなく、空を見ていた。見かけた女中がくすくすと笑っていた。佐助もそうだった。
「せっかくの小袖が汚れちゃうよ」
仕立てたばかりの新しい小袖は、残念ながら土に汚れてしまった。佐助の口調は、注意するものではなかった。佐助は、幸村の隣に腰を下ろした。
「奥州から戻って、それから、なんだか元気ないよね」
なんかあったの。幸村は言葉を濁す。あー、だとか、うー、だとか。困っているときの顔だった。
「佐助、鉢巻きを、新調してくれ」
「もう済んでるよ」
さすが、仕事が早かった。

よくわからない行動に出た。その政宗が、幸村は気になって気になって仕方がない。よくわからないこの気持ちが、こそばゆい。
「あーっ!」
急に立ち上がったかと思えば、幸村は一目散に部屋へと向かった。手にとったのはもちろん愛用の二槍だ。着衣も小袖のままだ。戻ってきた幸村の紅蓮脚を、佐助が甲賀手裏剣で受け止めた。こうなると思った。
「奥州で待っていろ、伊達政宗ェ!」
旦那ったら、感化されちゃったのね。烈火のするどい槍をかわしながら、佐助ははるか山の向こう側をぼんやりと見た。




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DOGOD69

タイトルから外れてしまったのは、幸村視点になり、脱シリアスしちゃったから。





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