月を撃ち落としてください



ある日のキャンパスに、いつも通りの家康がいた。
「どうしたら、三成は元気になる」
ワシはわからん。ときおり、家康は親友に向かってこう話す。相談を投げ掛けられても、元親は困っていた。こういう難しい相談には向いていないのだ。家康のそれは、友情とは別なものだ。しかし、飯を奢ってくれるから、相談は受ける。これも友情。
大谷との一件以来、家康と三成との距離は近づいていた。しかし肝心なところに至っていない。見ている側は、もどかしい。
肩を並べる二人の後ろから、慶次が飛びかかってきた。いつものことなので気にしない。
「家康は、石田に元気になってほしいのかい」
「あぁ」
「それだけじゃないだろ」
「慶次、あのなぁ」
誤魔化せないのだ。たしかに、家康は、傷心中の三成を落としたい。浅ましく思う。そんなことはない、と慶次が言う。
「ほら、噂をすれば、何とやら」
三人の前を、三成が過ぎていく。家康の背を、元親が押した。いってこい、と男らしく一言でしめるのだ。
いってくる。いってこい。家康を見て、背の高い二人の友人がけらけらと笑っていた。

「三成っ」
「家康、何用だ」
「いや、ちょっとな、勉強を手伝ってもらいたいんだ」
「数日前に聞いた覚えがある。まぁ、いい」
少しずつ、近づくしかないのだろうか。誰か、助けて!





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妄葬






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