きみはただ黙ってぼくを殴ればいい




なぜ、なぜだ!
彼は哭き叫ぶ。家康は豊臣秀吉を討った。倒さなければ、前に進めないからだ。倒さなければ、ならなかったのだ。あとで知った。泣く者がいた。三成はその一人だった。
事実を受け入れた。逃げも隠れもしない。堂々と付き合う覚悟をした。
「家康、貴様……っ」
三成の慟哭は止まらない。かといって、ここで頭を下げるような真似をするつもりはない。それこそ、無神経だ。家康は、動かなかった。三成に押し倒され、首元を掴まれても、抵抗はできない。しかし、始終、三成から目を離さなかった。ずっと、まっすぐに彼を見た。

お前はただ黙ってワシを殴ればいいのだ。

か細く見える三成の手は、赤くなっていた。
「なぁ、三成、」
ワシと行かないか、と言いたかった。唇はうまく紡いでくれなかった。伝えられないのは、なかなか歯痒い。
「信じていたのだ」

「貴様は私を裏切った」
裏切るつもりはなかった。それは言い訳になってしまうのだろう。家康は必死に言葉を探した。見つからなかった。
「お前なんか、大嫌いだ!」
冷たく体に突き刺さる。家康は唇を噛んで押し黙っていた。




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出口

短いけれど、こちらへ。黙ってるのは、家康のほうだったね






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