始まりの終わり金曜日



金曜日、また雨が降っていた。さきほど、急に降りだしたのだ。スーパーの帰り道、折り畳み式の傘を差して歩きながら、慶次は明日のことを考えていた。天気予報で確かめないといけないな。明日まで降り続いていたらどうしようか。
ぼんやりと部屋まで変える途中。横断歩道を渡ろうと歩行者ボタンを押そうとしたとき、慶次は向かいから渡ろうとしている人が、半兵衛だと気づいた。気づいて、呆気にとられた。そして、急な不安と、怒りが込み上げた。
雨具を持っていない、彼はずぶ濡れだった。
信号が変わって、慶次は走った。買い物のエコバッグのことは、頭にない。急いで、傘を半兵衛に傾けた。
「何やってんだっ!」
体は大丈夫なのか、と。案の定、半兵衛は咳き込んでいた。同時に、泣いていた。慶次は何も言えなくなって、肩を抱いて、彼を自分の部屋まで連れていくことにした。空は、半兵衛と同調しているようだった。
部屋に上がると、慶次は半兵衛を風呂にいれた。先に沸かしておいて、正解だった。濡れた服は洗濯機に投げ込み、代わりに自分の部屋着を渡した。サイズは、この際、気にしない。風呂に入って温まった後も、半兵衛は気だるそうな顔をしていた。風邪だろう。熱もある。顔が赤い。空調をして、熱冷ましを額に貼った。いざというときのために、そう言って買い置きしておいてくれた伯母に感謝した。
「慶次くん、すまない……」
「気にすんな」
「そうじゃなくて、」
明日は出掛けられそうにない。そのことだった。慶次は気にしていなかった。残念だと思わないと言えば、嘘になるけれど。
「俺はさ、お前が大切なんだと思う」
だから、半兵衛が無理をする必要はない。そう言いたかったのだ。
「僕も、君は大切だよ。秀吉の友達だから、とか、そういうのではないんだ……」
「秀吉」と、その名前を聞いて、慶次は黙ってしまった。何かが変わってきた。それは確かだ。




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半兵衛、大丈夫か。





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