初めてひとを殺めた気がした



戦場なら、相手の首を取るのが当然のことだ。殺めている、なんて、そんな感覚は、抱いてなかったように思える。今だから、いえる話である。
「あ……」
腹に碇槍の一撃をくらい、元就はそのまま倒れ込んだ。一瞬の出来事だった。本当は、数秒かかっているのだが、元親にその記憶はない。記憶されなかった。攻撃した側の元親のほうが驚く、という有り様である。慌てたように、元親は元就に駆け寄った。得物を放り出して、元就の小柄な体を抱いた。息も絶え絶えの彼は、「死にそう」であった。
「放せ、貴様の腕の中で死に逝くなど、不愉快だ……!」
元就は、たしかに、そう言った。かすれていたが、ちゃんと、聞き取れた。しかし、元親は放そうとしなかった。まばたきもせずに、じぃっと元就を見つめていた。
(そうか、死んでしまうのか)
己の手で、己の腕の中で。




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joy

補足。
「あ……」は元親の台詞。
元就はまだ死んでいないし、死なない、と思います、私はね。




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