突然襲われる火曜日



講義もいつも通りに終わって、半兵衛は慶次との約束通り、三号練から少し離れた食堂へと歩いていた。次の講義用のテキストくらいしか持ち歩いていないので、荷物は軽い。ゆえにかどうかは分からないが、足取りも軽かった。
今日はパンにするか、それとも安いうどんにするか、それよりも、慶次とはどんなことを話そうか。
そんなことを考えていた。下らない悩み、されど重大な悩みである。
道を曲がろうとして、半兵衛の視界には、数日ぶりの友の姿が映った。そして、目が合ってしまった。
空は青いし清々しいけれど、空気は暗いし重い。
そのまま、彼は、半兵衛の横を通っていった。話なんて、なかった。なんだか、体が揺れるような、そんな感じだった。
(空の青さに、目が眩みそう、なんて、)
単純に空気の癖に空気を読めなかった空が悪い。

「や、昨日ぶり」
先にテーブルに座っていた慶次は、今までキャンパスの外にいたらしい。なぜなら、その手にある某全国チェーン店のハンバーガーは、ここでは買えないからだ。わざわざ外に出なくたって(店まではそれなりの距離がある)、食堂で何かを買えば良かったじゃないか。半兵衛が悪態を吐くと、慶次はけらけらと笑った。突然笑って、突然真剣な顔をした。
「お前、泣きそうだな」
笑ってろよ、幸せが逃げるぞ。辛そうな笑みは、幸せそうには見えなかったのだ。



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慶次は、他人の気持ちとか、そういうのには敏感。優しくて、いいやつ。いいやつって、なかなか報われない。そう思うよ。




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