5.織田か浅井か



織田が朝倉を攻めた。それは浅井の存続の危機を問われた事件だった。織田家は長政の妻お市の家で、朝倉は以前からの浅井の盟軍だ。どちらをとるか、どちらをとっても血生臭い戦が待っている。
広間には長政とお市、父の久政、重臣が数人集まっていた。浅井家の面々を前に、お市はうつむいていた。顔を上げれば、避難の声を真っ向から受けてしまう。長政が堂々と彼女をかばうこともない。ずっと黙ったままだ。期待はしていないが、何か悲しく思った。
「どうするつもりです、殿」
家臣や父が何と言おうと、最終的に決断を下すのは、当主長政だ。
奥義をぱちんと鳴らし、長政がようやく口を開いた。
「市は、どうしたい」
皆が長政を、そして市を見た。市は長政を見た。視線が交わり、言葉が出ない。
「なぁ、市、どうしたい?」
「それは、長政様が決めること。私は口を出せません」
「私が義兄上につけば、そなたは私に嫁いだ意味が為る。義兄上へ反旗を掲げれば、そなたは板挟みの状態から逃げられない。まぁ、今、そなたを織田に返すこともできる。浅井の内情を義兄上に直接伝えられるな。そなたが、織田家の人間であるならば」
長政が市に向けて笑った。
市は今、決断を迫られているのだ。織田をとるか、浅井をとるか。

「わ、私は……」








 

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