3.小谷の城



後日、尾張から近江は小谷城へ、花嫁行列が続いた。籠に乗った白無垢の花嫁こそ、織田信長の実妹お市の方だ。彼女はこれより、城主浅井長政の妻となる。
(……退屈は変わってくれるのかしら)
緑の髪をまとめた美人に、皆が注目した。お市の結婚は、織田と浅井の同盟を意味していた。今一番の勢いは間違いなく織田信長だ。尾張のうつけと呼ばれた男は、確実にその手腕を見せつけていた。

一通りの儀式が終われば、あとは二人で床に入る。
お市は夫となる長政の待つ部屋へと通された。
座して待っていた長政はお市を見るなり、そっと微笑んだ。暗くてよく見えないが、それは以前、偶然顔を合わせたあの時のそれだ。
杯を酌み交わせば、長政がようやく口を開いた。
「尾張よりはるばる、近江へようこそ」
「……これより、夫婦、だそうです」
「まるで他人事のようだ」
お市の素っ気ない言葉にも、長政は気分を害した様子は見せなかった。陽気なのか、それとも鈍いだけなのか。
「そなたは、この結婚が嫌だったのか」
改めてその質問をされると、お市は言葉がつまってしまった。いつの間にか下を向いて考え込む彼女の顔を、長政は大きな手で包んだ。
「そなたにこうして触れることができる。俺はこれで、十分幸せだ」
「……おかしな人」
「おかしくて結構。武士など、所詮はおかしな人間だよ」
自嘲するかのように言う長政を、お市は嫌いになれそうもなかった。




------------



 

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -