空の眩しさに目を瞑る。


説得をしようと単身訪れた有岡城、しかし捕らえられてしまったた。情けなかったが、これが己だと、後悔はしていなかった。
城の地下、そこで幾月を過ごしてしまったのか、もうわからなくなっていた。不清潔な空間、悪臭漂うそこで、小寺官兵衛は必死に生きながらえていた。ろくな飯もない。今はもう、気力だけで生きているようなものであった。
とにかく今は生き残れ、秋は必ず来る。

官兵衛が解放されたのは、幽閉されてから、およそ一年後のことだった。荒木軍は織田家に降伏、有岡城は陥落した。これにより、一連の戦が動き始めるのだった。
「官兵衛様、ご無事かっ」
すぐさま数人の兵が城に入り、官兵衛を救出した。そのときの地下牢は、とても人の過ごせる環境ではなかったという。
自由のきかない体は兵によって起こされ、戸板で運ばれた官兵衛は、城の外へ出た。そこで官兵衛は、久しぶりの太陽を拝むのだ。
「日は、こんなにも明るかっただろうか」
声にならない音で紡ぐ。精一杯吸い込んだ空気が、不思議なほどうまい。まるで世界に包まれたような、大袈裟な感覚さえした。

「官兵衛は、無事だったか」
旧姓に戻して、黒田官兵衛を家臣に決めた秀吉が、ほっと肩を撫で下ろした。
「半兵衛や、官兵衛は、生きておったわ」
にっこりと笑う先に、半兵衛がいる。死してなお戦場を見渡す半兵衛がいるのだ。

「眩しくはないでしょうか」
心配した小姓が布を用意させるが、官兵衛はそれをやんわりと断った。
「この照日を、感じていたいのだ」
なぜか、悲しい気持ちになった。
官兵衛の知らぬうちに、友は死んでいた――
彼はまだ知らない。しかし、感づいてはいるのかもしれなかった。




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メランコリーは逃げ出した

史実を知らない方でもわかるような書き方を目指す

泣くに泣けぬ
→空の眩しさに目を瞑る。





 

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