大谷吉継



今さら、なぜ石田三成の味方になってしまったのか、その心は本人のみが知る。
大谷吉継、彼こそ、太閤に十万の兵を指揮させたいと言わせしめた男だ。豊臣子飼いの将の一人で、西軍実質総大将三成とは親しい間柄だった。小柄な三成と違って、彼はがっしりとした体格をしていた。
しかし、数年の後、吉継は病を発してしまった。不治の病だった。変貌する容姿を隠そうと頭巾を被った。何も言わずとも、人々は避けていった。仕方がないことだとわかっていたが、寂しくもあった。それでも、二人、太閤と三成は、変わらずにいた。嬉しかった。

輿の上で、ほんの少しの視力と、耳と感覚を頼りに事態を察知した。
「五助、」
「小早川の裏切りをきっかけに、西軍は崩壊し始めました」
湯浅五助の報告に、吉継は軽く頷いた。予測した通りの展開になっていた。
「小早川隊の動きが激しく、ここもそろそろ危険です」
五助は、お逃げください、とは言わなかった。吉継も、五助も、そのつもりでこの戦場に立ったのだ。

「私の首は、誰にもとられぬよう、埋めてしまいなさい」

にっこりと、光のない目で、吉継が笑った。五助は、迷うことなく、承知したのだ。
友への義理は果たした。武士としての本壊も擬似的に遂げた。病に蝕まれた体に負けることもなかった。
大谷刑部少輔吉継の生も、なかなかの出来になったのではないか。これも悪くない飾り方だ。

友よ、さらばだ。





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一年たって、大谷刑部の最期をば。





 

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